平均顔は、単純な構造と明快な効果から、研究素材として多方面で使われ、顔研究の発展に大きく寄与してきた。しかし、何枚の顔写真を用いて平均顔を作成すればよいかといったガイドラインは特になかった。本研究では、平均顔生成のために必要な顔写真の枚数に関するガイドラインの作成を目的とし、工学的観点および認知科学的観点からの検証をおこなってきた。また、検証を進める上で必要不可欠な、年代別顔写真データベースの構築のため、顔写真の収集をすすめた。 最終年度となる平成26年度は、二点の実験的検証をおこなった。第一は、平均顔の作成に必要な枚数についてさらなる検討を加えた。平成25年度までの成果では、30枚程度以上の顔写真を用いることが望ましいことを示したが、平均顔は、作成に用いられる顔写真の数が増えるほど、画質がぼやけていき、しみやしわなどの年齢情報が消失してしまう。そこで、どのような顔写真のセットから作成しても同じ人物になるという同一人物性と、年代の異なる平均顔の年齢差の知覚に着目し、妥当な平均顔の作成に必要な顔写真の枚数について心理学的実験により検討した。実験の結果、24枚程度の顔写真で作成した平均顔であれば、同一人物性の知覚と年齢差の知覚という点で、バランスのとれた妥当な平均顔となることを示した。 第二は、顔の知覚メカニズムであるプロトタイプ効果について、潜在学習の観点から顔の類似性に着目した実証的検討を加えた。実験の結果から、私たちが日常的に行う多くの顔の個別処理に加え、明示的に提示されることのない顔のプロトタイプあるいは視覚的規則性という顔のメタ情報を獲得することが示された。 顔データベースの構築については、平成26年度は40代から80代の男女、30名の顔写真を収集し、本研究期間では230名の顔写真を収集した。また、平均顔・標準顔の作成ツールは、MacOS環境での動作実現をすすめた。
|