研究課題/領域番号 |
23500266
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
神田 智子 大阪工業大学, 情報科学部, 教授 (80434786)
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キーワード | 国際情報交流 / アメリカ合衆国 / デンマーク / 非言語行動 / HAI / 異文化コミュニケーション / 対話エージェント / アバタ |
研究概要 |
本研究は,多文化共生社会に適応可能な擬人化エージェントの非言語行動とインタラクション評価を,23年度:表情,24年度:相槌,25年度:対人距離の順で実施する予定である.2012年度の研究計画は,文化によって異なるタイミングで相槌をうつエージェントを用いて,相槌タイミングの差異による対話エージェントと人間間のインタラクション評価実験を行うことで,文化適応した相槌の重要性を示すことであった.以下の手順で予定通りの研究を実施した. 1)相槌タイミングに関する言語学研究の文献調査を行い,日本と米国の相槌タイミングを数値化した.2)任意のタイミングで相槌をうつ対話エージェントを開発した.3)日本人実験参加者に対して,Wizard Of OZ法を用いた実験を行った.実験内容は,日本人および米国人タイミングで相槌をうつ対話エージェントとの対話の印象を実験参加者が評価し,発話長を計測するものである.4)実験の結果,日本人と同じタイミングと頻度で相槌を打つエージェントとの対話は,米国人のタイミングで相槌を打つエージェント,および全く相槌を打たないエージェントとの対話より,発話長が長くなり,発話者のストレスが軽減され,エージェントに対する親近感が向上することが示された. 5)2012年度の研究成果を国際学会口頭発表1件,2011年度の研究成果を国内ポスター発表1件を行った. 6)2012年度は,日本人実験参加者による仮説検証であったが,2013年度以降,アメリカ人実験参加者による実験を実施する予定である. また,25年度に実施予定の「エージェントと人間の対人距離」研究を前倒しで行い,以下の研究成果を得た.1)エージェントと人間の対人距離測定のための初期実験システムの開発.2)研究成果を国内学会口頭発表1件,国際学会での口頭発表1件を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度は,当初の予定通り,日本人とハンガリー人がデザインしたエージェント表情を用いて,エージェントの表情解釈の手がかりとなる顔部位の文化差をWeb実験で検証し,仮説「日本人とハンガリー人の間には,エージェントの表情解釈時に用いる顔部位が異なり,日本は目を,ハンガリー人は口の形をもとに表情を解釈する」が支持され,3件の学会発表を行った. 24年度は,当初の予定通り,文化によって異なるタイミングで相槌をうつエージェントを用いて,相槌タイミングの差異による対話エージェントと人間間のインタラクション評価実験を行った.その結果,「日本人実験参加者にとって,日本人のタイミングと頻度で相槌を打つエージェントとの対話が好まれ,発話長が長くなる」という仮説が支持され,3件の学会発表を行った.また,アメリカ人を実験参加者とする実験を,25年度に米国内で実施する予定である. また,25年度の研究計画である「エージェントと人間の対人距離」研究を前倒しで行い,エージェントと人間の対人距離測定のための初期実験システムの開発,および成果発表2件を行った.実験システムには改良の余地があるが,25年度の研究を早期から進めることができると考える.したがって,23-24年度の研究予定はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
24年度に実施した,相槌タイミングの文化的差異による対話エージェントと人間間のインタラクション評価実験を,25年度も継続する.その理由は,日本人実験参加者の実験結果を国際学会で発表したところ,米国とデンマークの研究機関から共同実験の提案があったためである.25年度に,24年度と同様の実験をアメリカおよびデンマークでそれぞれの国の実験参加者を用いて実験し,相槌タイミングの文化適応の重要性を検証する予定である. また,25年度に実施予定であった「エージェントと人間の対人距離」研究を24年度に前倒しで始めた.本研究にあたり,3D仮想空間上で任意に立ち位置を操作できるエージェントを用いた初期実験システムを開発し,エージェントと人間の対人距離の調整行動を計測した.25年度は,対人距離の実験システムを改良し,複数エージェントとの対話環境を構築し,日本人実験参加者とエージェントとの多人数会話における対人距離を測定する予定である.現実世界にいる人間が,仮想空間上のエージェントと適切な対人距離を保つための調整行動を取ることを検証することで,仮想空間上にも身体性が保持されること,また適切な立ち位置にエージェントを配置することの重要性を示すことができると考える. また,23-25年度の「多文化共生社会におけるエージェントの非言語行動研究」の研究成果を,表情,相槌,対人距離の観点からまとめ,成果の発表を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
対人距離測定のための実験システムの開発費として30万円,海外の研究協力者との打ち合わせおよび成果発表のための海外出張旅費として80万円,国内調査研究および成果発表旅費として10万円,25年度の研究費合計は120万円である.
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