研究課題/領域番号 |
23500273
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小野 功 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (00304551)
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キーワード | 実数値進化計算 / 実数値GA / 自然進化戦略 / 関数最適化 / 大域的多峰性 / 大谷内探索 |
研究概要 |
本研究課題の目的は,大域的多峰性の問題空間において未探索の大谷を効率よく発見するための探索アルゴリズムの構築することである.本年度は,主に大谷内の探索エンジンの性能向上を目標として研究を推進した.本年度の主な研究成果は以下のようにまとめられる. (1) 現在最も高性能な実数値GAの一つであるAREX/JGGの問題点を指摘し,これを克服した新たな実数値GAを提案した.提案手法は,まず,集団中の最悪n+1個体を交叉のための親個体,集団の評価値に基づく加重平均を交叉の中心としてλ個の子個体を生成する.次に,λ個の子個体から上位n+1子を選択して,集団中の親個体と入れ替える.これにより,集団が谷底を覆っていない場合は集団の谷底方向への移動を加速し,集団が谷底を覆った場合は集団の谷底への収束を加速できると考えられる.代表的なベンチマーク問題に提案手法とAREX/JGGを適用したところ,すべての問題で提案手法がAREX/JGGを凌駕することを確認した. (2) 距離に基づく指数自然進化戦略 (DX-NES)の提案とその拡張を行った.DX-NESは,多変量正規分布に従って解をサンプルしたときの目的関数の期待評価値を最小化するように,自然勾配に基づいて多変量正規分布のパラメータを学習する.自然勾配は,直接計算することができないため,モンテカルロ法により推定を行う.この際,分布が谷底を覆っていないと判断される場合に,分布の中心から遠くに位置する良い個体に大きな重みを与えることで,分布の谷底方向への移動を加速している.また,探索状況により自然勾配の推定精度が変化することに着目して,学習率を適応している.現在最も有力な進化戦略であるCMA-ESとベンチマーク関数を用いた性能比較を行ったところ,DX-NESがCMA-ESを凌駕する性能を示すことを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度は,大谷内探索のための高性能な実数値 GA を構築することを目的としていた.具体的には,REXstar+JGG [小林 09]の性能を凌駕する実数値GAの構築を目的としていた. 上記の目的に対して,今年度は,AREX/JGG [秋本 09]の性能を凌駕する実数値GAを提案することができた.AREX/JGGは,REXstar+JGGの発展版であり,REXstar+JGGの座標系の回転に対して依存性をもつという問題点を克服している. さらに,今年度は,実数値GAの提案に加えて,距離に基づく指数自然進化戦略 (DX-NES)の提案とその拡張を行った.現在最も有力な進化戦略であるCMA-ESとベンチマーク関数を用いた性能比較を行ったところ,DX-NESがCMA-ESを凌駕する性能を示すことを確認した. 以上より,本年度は,当初の計画以上に進展していると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,研究実績の概要で記した提案アルゴリズムを学術論文としてとりまとめる作業を行う.また,引き続き,大谷探査手法,および,大谷内探索手法の高度化に関する研究を行う.さらに,これまでの研究において得られた知見を活かし,困難な実問題として知られるレンズ設計問題に取り組む.レンズ設計問題は,大域的多峰性を有すると考えられている問題である.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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