研究課題
本年度は、明るさ知覚におけるエッジ強調(コントラスト)効果が、チューリング条件に類似した強抑制性結合興奮系のネットワークとその階層処理によって説明できることを確認した。また結果として、弱いエッジの検出にその結合興奮系が応用可能であることを示した。等間隔の格子状に配置され離散的に結合されたFitzHugh-Nagumo型の非線形興奮素子からなるネットワークを考える。この結合興奮系の初期条件に濃淡画像を与えたとき、時間の発展と伴に自発的にエッジ位置にパルスが形成されることが既に知られていた。ここで、FitzHugh-Nagumo素子の状態は2つの変数:活性化因子と抑制性因子の時間発展として記述され、ネットワーク格子点間における抑制性因子の結合強度が活性化因子のそれよりも大きいとき、エッジの位置にパルスが形成される。この性質を持つ結合興奮系の2次元ネットワークと、画像処理の分野で従来より広く用いられていた緩和法の考え方を組み合わせ、いくつかの画像解像度を持つ階層化された画像群に対して適用することで、エッジ強調の再帰的アルゴリズムを実現した。また同時に、従来は困難であった緩やかな勾配を持つ弱いエッジ(soft edge)を検出することも可能となった。明るさ知覚においては、マッハバンド効果のように明暗の境界においてエッジが強調される現象が観測される。本研究成果として、チューリング条件に類似の強抑制性結合(側抑制)の効果として、エッジ強調を説明することができた。
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