成果の第1点は高階自己組織化マップ(高階SOM)による形状空間法の確立である.これは (1) 形状の集合を取り扱うための理論体系の確立,(2) 実際に形状集合を扱うためのアルゴリズムの確立,(3) 現実の形状設計問題への応用,の3点にわたって取り組んだ.理論体系については,多様体による形状表現と,形状の連続変形を表現する多様体の積空間をファイバー束で表すとともに,統計的機械学習における潜在変数推定問題に帰着することを示し,形状の数学的な取り扱いと機械学習としての理論の橋渡しを確立させた.またそれを実現するアルゴリズムとしては高階SOMを応用することで実現した.さらに開発したアルゴリズムを多目的形状最適化問題に応用することを試みた.具体的には火星探査機航空機の翼形状最適化問題に応用し,形状設計上でクリティカルな形状箇所の可視化ができた. 成果の第2点はテンソルSOMの発展である.今年度はマーケティングなどのビッグデータ解析への応用をめざして,欠損データを多数含む関係データ解析を試みた.欠損値推定のアルゴリズムを開発し,映画タイトルの評価データ (Movie Lens) に応用した.従来手法と比べてもほぼ同等の欠損値推定が実現でき,かつデータマイニングに有用な可視化もできることが示された. 成果の第3点は,高階SOMにオンライン学習と追加学習の機能を持たせ,ライフスパンで新規データを学習し続けるアルゴリズムSEEMの開発と,自律ロボットへの応用研究を完成させたことである.すなわちリアルタイムでの行動と学習の同時進行と,常に新規データが現れ続ける環境での学習アルゴリズムを開発したことである.これにより,知能アルゴリズムとしての基盤を確立した.
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