研究課題/領域番号 |
23500283
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
本多 克宏 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80332964)
|
研究分担者 |
市橋 秀友 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30151476)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 共クラスタリング / 協調フィルタリング / 意思決定支援 / ファジィクラスタリング |
研究概要 |
本研究では,共起関係や不完全性,非ガウス性などのデータに内在する特異な特性を許容するデータ分類手法の開発を目的としている.初年度は主に理論的側面からの展開として,以下の成果を上げた.(1) 先行研究で開発した0-1型履歴データのための逐次的な共クラスター抽出モデルの発展として,アイテムの分割に選択的な排他的制約を付加する手法を提案し,協調フィルタリングにおける推薦性能の向上を確認した.アイテムの特性に鑑みた推薦が可能となり,ヒトに優しいインタフェースの開発に寄与する成果を得た.これらの成果について,3件の国際会議発表と2件の国内学会発表を行った.(2) 非ユークリッドな関係性データに内在する局所的な線形依存関係を抽出する線形クラスタリング法を開発し,ノイズや不完全データを処理する手法を提案したほか,意思決定支援ツールとしてデータ構造を視覚化する手順とその有効性を示した.電子メールなどのテキストデータに代表される非構造データの自動分類などの基盤技術を構築する成果を得た.これらの成果について,3件の英文学術雑誌発表と,3件の国際会議発表および2件の国内学会発表を行った.(3) ファジィクラスタリングの理論的基盤の考察として,正則化法とノイズ感度の関連や不完全データの主成分分析との関連についての検証研究や,クラスター妥当性評価への応用研究を行った.(1)や(2)で開発した理論モデルを大規模な実データへ適用する際のモデル改良に必要となる知見が得られた.これらの成果について,1件の英文学術雑誌発表と,4件の国際会議発表および7件の国内学会発表を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
主に理論的側面からの展開を図った初年度としては,当初の研究の目的を充分に達成する成果を得た.以下に,個別の課題における達成状況を述べる.(1) 共クラスタリングの改良にかかる課題では,Ojaらがニューラルネットに用いた主成分分析に基づくモデルでの知見をもとに,選択的に排他的制約を課するモデルを開発し,その有効性が確認できた.これらの成果は,当初に想定した目標を完全に達成するものであった.(2) 非ユークリッドな関係性データの分析法に関する課題では,当初の想定では「非ユークリッド性」と「不完全性」および「ノイズ感度」を個別に解決する目標を持っていたが,それらに対する融合的な解決法と視覚化への拡張に至るまで,想定を超える成果が得られた.(3) その他の展開としては,当初に想定した「半教師付きモデル」による改良を検討することはできなかったものの,異なる視点に基づいて,正則化法とノイズ感度の関連や主成分分析との関連についての考察が行われ,クラスター妥当性評価にかかる知見の獲得につながった.したがって,目標に達する成果が得られたものといえる.
|
今後の研究の推進方策 |
当初の想定通り,第2年度以降は, 理論的・応用的側面の両面について展開を図る.理論的側面については,初年度に開発した選択的な排他的制約を付加する手法の計算効率を改善するために,FCM型の交互最適化アルゴリズムの開発を目指す.また,新たな展開としては,階層化意思決定法(AHP)における一対比較行列と共起関係行列との類似性に鑑み,評価問題における意思決定支援モデルの開発を目指す.特に,集団意思決定におけるAHP評価値のグループ化にクラスタリングの適応可能性を見出しており,初年度に共クラスタリングへ実装した機構をAHPモデルに融合することを検討している.一方,応用的側面については,引き続いて,協調フィルタリングによる個人化された推薦モデルの改良を取り上げる.理論的側面から計算効率の改善が達成されれば,より大規模な履歴データの取り扱いが可能となると記載される.また,ゲノム情報に代表されるセンシティブな個人情報の取り扱いへの応用として,データのグループ化(匿名化)によるプライバシー保護モデルの開発もターゲットに入れる.この範疇には,集団意思決定において個人間の直接の対立を防ぎながらシナリオの相違を反映した意思決定の支援が可能となるツール開発も考慮される.そのほか,第3年次に向けては,ヒューマンインタフェースとしての知能化ロボットへの実装や太陽光発電によるスマートハウス実現のための発電量予測モデルへの拡張なども視野に入れ,基礎データの収集などを行っていく.
|
次年度の研究費の使用計画 |
応用的側面を進めるにあたり,計算機シミュレーションを実施するためのパーソナルコンピュータ(3台)と関連ソフトウェアを購入し,研究室の大学院生(M2:2名,M1:3名)の協力のもと,C言語プログラミングをベースとした検証実験を進める.ここで,汎用的なパーソナルコンピュータを使用する理由としては,大規模なデータの取り扱いを汎用的な機器で可能とすることが,本研究の目的に含まれるからである.以上のために,物品費および人件費・謝金の支出を計画する.また,得られた成果の発表の場として,6月にオーストラリアのブリスベンで開催される計算知能に関するIEEE国際会議(IEEE-WCCI2012),8月に沖縄で開催される第22回インテリジェントシステムシンポジウム(FAN2012),9月に名古屋で開催される第28回ファジィシステムシンポジウム(FSS2012)および11月に神戸で開催されるソフトコンピューティングに関する国際会議(SCIS-ISIS2012)を見込んでいる.以上のために,旅費およびその他費の支出を計画する.
|