研究課題/領域番号 |
23500288
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
鶴田 節夫 東京電機大学, 情報環境学部, 教授 (00366395)
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研究分担者 |
櫻井 義尚 明治大学, 総合数理学部, 准教授 (30408653)
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キーワード | 遺伝的アルゴリズム / 進化型知能化方式 / 問題パターン / 最適化 / 事例ベース / 強化学習 / 分散並列進化方式 / 多様性エントロピー |
研究概要 |
配送先の配置など配送パターン・問題パターンは現場によって異なる。先端的最適化手法・進化的手法はこれらの変化に十分には対応できず、産業応用への障害となっている。徹底的効率化が図られ精密化・複雑化しており、問題パターンに合わせた方式/パラメータ調整が困難で、単純な並列化による効果も得られにくいためである。本研究では、これらを解決し、産業応用へ向け、先端的進化最適化手法の更なる改善を図る。このため、配送ルートの最適化を行う遺伝的アルゴリズムGAのパラメータ・方式の自動制御システム技術などが必要となる。これには、遺伝的アルゴリズムの解析・改良手法、強化学習をはじめとするそのパラメータ・手法の自動選択・学習方式、問題パターンの判別による最適方策選択方式などの開発が重要である。また、クラウド等を活用した分散並列進化方式やそのパラメータ・方策の自動設定・学習方式など進化知能システムの分散最適化技術の開発が必要になる。 25年度は高効率探索オペレータ下で長期的報酬を最大化する強化学習型GA方式などに用いることを目的に個体の進化・多様化状態を数理表現するエントロピー定義を改良した。これにより、GAの進化に必要な個体の多様性の効率的計測を可能にした。問題パターンの判別による最適方策の分析の結果、問題パターンのドラスティックな変更は、実用上、無視して良いことに気づき、既作成の実用可能あるいは高精度な配送ルートを事例として活用することにより最適な解を対話応答時間内に探索できる進化型知能化方式やCBGA(Case Based GA)の提案に至った。実験評価により、その効果を確認した。 分散化に関しては、このCBGAを複数の分散コンピュータ上で実現した場合をシミュレーション評価し、この知能化方式の分散並列性の効果を確認した。すなわち単純な並列化を超える精度を達成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
25年度は高効率探索オペレータ下で長期的報酬を最大化する強化学習型GA方式などに用いることを目的に個体の進化・多様化状態を数理表現するエントロピー定義を改良した。これにより、GAの進化に必要な個体の多様性の効率的計測を可能にした。一方、問題パターンに柔軟に適応できる効率的で実用的なパラメータ学習を実現するための解析を進めていた。この時、問題パターンの判別による最適方策の分析において、実用上、配送地点など問題パターンは現場毎の差異は大きくても、動的・時系列的に大幅な変化は少ないことに気づいた。こうして、既作成の実用可能あるいは高精度な配送ルートのうち問題が対象問題に類似したものやその作成方策・パラメータを事例や部分解として活用する進化方式・遺伝方式の研究開発を進めた。その結果、強化学習なども含めた学習技術の融合を見通しつつ、事例を対象問題に合わせて調整・進化させることにより最適な解を対話応答時間内に探索できる事例ベース進化型知能化方式やこれをGAに組み込んだCBGA(Case Based GA)の提案に至った。 分散化に関しては、このCBGAをクラウドなど複数の分散コンピュータ上で実現した場合をシミュレーション評価し、この自律協調的知能化方式の分散並列性の効果を確認した。すなわち単純な並列化のを超える精度を達成できた。 配送ルートなどの最適化において、問題パターンにより、GAもまだまだ適用が困難な場合が多い。本研究の学習や自律分散協調化により、様々なパターンに対し、実時間応答性能・精度・実用性が期待できるGAや進化型知能の制御方式が明らかになりつつある。研究成果として、これらを6件のIEEE系の国際学会において発表し、論文出版した。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は、研究課題である進化型知能アルゴリズムの最適性向上に対し、事例の活用により大幅な効果を上げた。また、高効率高信頼な強化学習型GAやエントロピーを用いたGAの個体の多様性維持理論を提案してきた。26年度以降は、これらを、進化型知能の枠組みやそれに組込むヒューリスティクスの各種方式と組み合わせ、事例やそれに含まれるパラメータを強化学習方式や多様性維持理論をベースに自動調整する方法を研究する。以上により、研究課題である進化型知能アルゴリズムにおけるパラメータ・方策制御方式のさらなる展開を試みる。 一方、分散コンピュータを用いて進化パラメータやその制御手法の性能計測・評価を行うためのクラウド指向ポータルを開発してきた。事例を活用した方式の分散クラウド上での性能評価を単一コンピュータ上でのシミュレーションによって行った。26年度以降は、これらをベースに実際のクラウド上に分散した複数コンピュータ上でこれら事例や強化学習・多様性維持理論を用いた自律協調方式を開発し評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の予算は、前年度の繰越が55万円あったためと、分散並列進化実験を単一あるいは少数のコンピュータによるシミュレータで行ったためと、日本で開催された国際会議への参加などで旅費が比較的安かったため、約30万円を次年度に持ち越した。 次年度使用額は実験用プログラムの作成などの人件費やシミュレーション依存度の少ないより本格的な分散並列進化実験用のコンピュータ費、および最終年度の成果発表のため、増える予定の国際学会出張費用などに使う予定である。
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