研究課題/領域番号 |
23500290
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
前田 裕 関西大学, システム理工学部, 教授 (60209393)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 複素ニューラルネットワーク / 同時摂動 / クリフォード代数 / ハードウェア / FPGA / FPAA |
研究概要 |
つぎの各研究実績が得られた。1.同時摂動法による高次元ニューラルネットワークの提案と解析に関して、(1)同時摂動を用いた高次元ニューラルネットワークの学習則の提案と、(2)同時摂動を用いた高次元ニューラルネットワークの動作確認と性能評価について成果が得られた。具体的には、(1)について、複素ニューラルネットワークの学習について検討し、同時摂動最適化法を用いた、四元数ニューラルネットワーク、八元数ニューラルネットワークに対する学習則を提案した。(2)について、提案した同時摂動型学習法の有効性をアフィン変換などのベンチマーク的例題を対象にMatLabを用いてプログラムを作成し、その学習動作を確認した。また、その基本性能についての評価を行った。この結果、従来のバックプロパゲーション法と提案した手法が同等の性能を有することがわかった。ただ、高次元になるほど、同時摂動型学習法のバックプロパゲーション法に対する優位性が損なわれる結果が出ており、原因の解明が必要となった。2.FPGAによる複素ニューラルネットワークの実現に関しては、実装のためのハードウェア記述言語VHDLによる複素ニューラルネットワーク各部分の基本設計が完成した。さらに、FPGAへの実装を行った。この結果、簡単な例題での実行結果を得た。ソフトウェアによる実現に比べて、極めて高速に学習動作が行われることが確認できた。3.FPAAによる高次元ニューラルネットワークの実現に関しては、アナログ回路での実現の可能性を検証するために、FPAAでの複素演算についての回路設計を提案し、回路シミュレータでの動作確認を行った。また、FPAAに実装し、その回路の精度評価を行った。その結果、複素ニューラルネットワークの演算回路として使用できることを確認した。一方、大規模なニューラルネットワークの作成には精度の向上が必要であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
つぎの各項目についての、以下の通りの進行状況で、全体として、ほぼ当初の予定通りの達成度であった。 同時摂動法による高次元ニューラルネットワークの提案と解析に関しては、当初の計画通り、同時摂動最適化法を用いた、複素ニューラルネットワーク、四元数ニューラルネットワーク、八元数ニューラルネットワークに対する学習則を提案することができた。さらに、提案した同時摂動型学習法の性能を評価するため、簡単なベンチマーク的例題を取り上げ、プログラムを作成し、前向きの動作や学習動作について、バックプロパゲーション法との比較を行った。複素ニューラルネットワークについて詳細な検討を行った。また、四元数、八元数ニューラルネットワークについても、簡単な比較が行えた。当初の計画以上に、性能の比較を行うことができた。FPGAによる複素ニューラルネットワークの実現に関しては、FPGAへの実装のためにハードウェア記述言語VHDLにより、複素ニューラルネットワーク各部分の基本設計を行った。さらに、論理合成、配置配線を行い、FPGAへの実装を行った。論理合成や配置配線の過程でのデバッグが容易であったことから、当初の予定通り、実装まで行うことができた。 FPAAによる高次元ニューラルネットワークの実現に関しては、アナログ回路シミュレータでの動作とFPAA上での複素演算についての精度評価が行えた。これを用いたFPAAによる複素ニューラルネットワークの実現性について検討した。一方で、大規模化に際しての精度向上の問題点が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
23年度の研究結果を受けて、試作した複素ニューラルネットワークシステム全体の性能評価、高次元化およびそのシステムの産業応用事例への開発を展開する予定である。同時に、同時摂動最適化法の活用を広範囲に検討する。 試作した複素ニューラルシステムの性能評価と大規模化に関しては、23年度にFPGA上に試作した複素ニューラルネットワークシステムの学習の精度や学習速度などの学習動作の詳細などについて検討する。同時に、この複素ニューラルネットワークシステムの大規模化、改善および改良を計る。 高次元ニューラルシステムの設計と試作に関しては、23年度にVHDLで設計された複素ニューラルネットワークシステムを基礎に、これを高次元化することを試みる。基本設計とその動作確認を完了する。さらに、試作したニューラルシステムを用いた制御システムへの応用として、ニューラルネットワークを用いたロボットの制御に関する研究に関する成果が得られていることから、複素ニューラルネットワークや高次元ニューラルネットワークをロボットの制御に用いることを考える。また、試作したニューラルシステムを用いた画像処理、パターン分類への応用する目的で、画像におけるエッジ検出などの画像処理の分野での応用を試みる。また、指文字認識システムにおけるパターン分類機としての検討を行う。さらに、他の分野での応用の検討を行う。 同時摂動学習則の各種ニューラルネットワークへの適用の可能性を広範囲に検討し、そのシミュレーションを通した性能評価を行う。同時に、FPGA上に実現されたニューラルネットワークシステムとコンピュータシステムとの連携を目指して、FPGA上のニューラルネットワークシステムに対する入出力をコンピュータ上から実現するインターフェースを完成する。コンピュータ上からデータを入力し、演算結果をコンピュータ上に取り込むシステムを完成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
この研究では、FPAAやFPGAなどのハードウェアへのニューラルシステムの実装とそれに伴う設計、事前のシミュレーションが作業の中心となる。FPGAを含めた基本的なハードウェアはすでに準備されている。しかし、設計やシミュレーションのためのソフトウェアの保守維持費用が必要で、これを計上している。 同時に、ハードウェア化のためのHDLによる設計、回路設計および検証用プログラム、解析用プログラム、応用システムの開発など、専門知識を有した者による作業が必要で、そのための経費を謝金として申請している。 成果発表のための外国出張については14th WSEAS International Conference on MATHEMATICAL & COMPUTATIONAL METHODS in SCIENCE & ENGINEERINGあるいはWorld Congress on Computational Intelligenceなどのヨーロッパあるいはオーストラリアなどで開催されるニューラルネットワークなどに関する主要な国際会議でPlenary talkや成果発表を行う予定であり、同時に、国内での学会での成果発表も予定しており、その予算を計上している。
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