研究課題/領域番号 |
23500294
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
芳鐘 冬樹 筑波大学, 図書館情報メディア系, 准教授 (30353428)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 図書館情報学 / 情報図書館学 / 研究評価 / 社会ネットワーク / 科学社会学 / 科学計量学 / 計量情報学 / 計量書誌学 |
研究概要 |
学際的研究の特性を明らかにするとともに,学際共同研究の影響についての知見を得ることを目的に,初年度である平成23年度はまず,学際的応用計算機科学,学際的生物学,学際的地学,環境科学など「学際的」と称されている研究領域を対象にして,領域に属す論文の引用パターン,および領域に属す研究者の生産性や共同研究ネットワークなどに関する調査を行った。Science Citation IndexおよびScopusから抽出した引用データを含む書誌データを情報源とした。分析結果から得られた主な知見は,以下の2点である。 (1) 論文の被引用文献が属す分野の多様性と最新性,及びそれらの変化に着目して,領域ごとの傾向を分析した。結果,同じ主題の中での比較では,学際性が高いとされる領域の方が,被引用文献の分野の異なり数は多く,プラットの尺度(集中度の指標)は低いことを確認できた。また,被引用文献の分野の異なり数がほぼ等しい分野も,プラットの尺度には差異が表れていた。 (2) 学際的共同研究を実施した研究者は,生産性だけでなく,共同研究者数,発表論文掲載誌の異なり数についても変化を示す傾向が確認できた。 また,本研究のネットワーク分析(研究者(= 学術情報の生産を担うもの)間のネットワーク)の枠組みを,他の対象(図書館(= 学術情報の流通を担うもの)間のネットワーク)に適用する可能性も探った。 このような客観的指標に基づいて研究領域の特徴を計量する分析は,学術政策への示唆だけでなく,「学際性とは何か」の再検討に資する知見が得られるという点でも意義を持つと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の計画として挙げている下記の4点について,それぞれ,おおむね予定どおり進めた。(1) 学際的研究領域の特徴に関する各側面について操作的定義を設定する。(2) 研究者の論文発表状況に関する各側面について操作的定義を設定する。(3) 論文の書誌情報をデータベースから抽出する。(4) (1)で行った指標の検討を踏まえ,対象とする研究領域の特徴を測定・分析する。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,前年度に検討・設定した観点と指標を用いて,学際的研究開発を実施する前後の活動状況の変化,そして,学際的研究開発の被引用数などへの影響について調査する。さらに,学術論文だけではなく,より応用指向の研究・開発成果である特許文献も対象に含め,総体的な分析を行う。最終年度の平成25年度には,指標の標本量依存性を考慮した枠組みを導入し,前年度までの分析結果を検証する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の研究遂行においては,計算アルゴリズムの効率化を工夫し,データ処理の負担を軽減したため,データ処理用コンピュータとして,交付申請時に予定していた金額よりも安価なコンピュータを購入して研究に用いた。そのことなどが理由で,次年度使用額が計上されている。この次年度使用額は,新たなコンピュータの購入などに充て,学術論文だけではなく特許文献のデータも対象にした,より高度な分析のために用いる。その他の事項については,当初の交付申請時の計画どおり,ハードディスクドライブ,ソフトウェア,研究資料,外国語論文の校閲,学会参加の旅費などに使用する。
|