研究概要 |
本研究では,公共図書館における利用者の情報探索行動を解明することを目的とし,近年開発の進むRFID(無線周波固体識別:Radio Frequency Identification)の技術を応用して,利用者が情報探索を行う際の行動軌跡を記録,分析してきた。 本年度は,3年計画の3年目にあたる。初年度は,情報収集や調査依頼館の決定,調査依頼館において予備調査を実施し,2年目は,初年度に行った予備調査において明らかになった問題点を改善できる方策を検討し,調査依頼館において本調査を実施した。3年目にあたる本年度はデータ分析を経て,この手法の有効性を検討し,論文執筆を行うことを目指した。 その結果,資料に貼付されたRFIDタグを用いた位置特定システムには,利用者の館内行動を把握するためのデータを取得するのに有効であること,館内の位置(書架に配架された資料の分野に至るまで)に関する詳細なデータを得ることが可能であることが確認された。 データの分析の最初の段階では,業者に作成を依頼したアプリケーションソフトを使用して集計を行ったが,専門家に相談する中で,統計処理を行えば,より詳細は分析が可能であることがわかり,統計用の言語であるRを使った分析に着手した。この作業により,予定が大幅に遅れたものの,新たな可能性も見いだすことができた。調査で取得した時系列データ(時刻と座標上の位置)を用いて,平面上の確立密度を算出し,グループごとに行動パターンの傾向を見いだすことができる。例えば,資料を借りた利用者と借りなかった利用者とでは,明らかに訪問エリアに違いがある。現在も作業は継続中なので,次年度中には論文執筆を行い成果を公表する予定である。
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