本研究は、日本が諸外国と比較して遅れている地方自治体の電子化の現状を分析し、電子化を促進するための政策の提言を目的としている。そのために、平成20年度から平成23年度までの「地方公共団体における行政情報化の推進状況調査」(総務省)のデータを利用して、電子化の進捗傾向と、進捗に影響する要因を検討した。 平成23年度は、兵庫県のデータを利用して、周囲の自治体の影響について予備分析を行った。その結果、周囲と比較して劣っている自治体の進捗が大きい事例が得られた。平成24年度は、より詳細な分析を行うために、電子化の状況を示す指標の作成を行った。また、複数の統計モデルを利用して、電子化の進捗への影響要因の分析を行った。その結果、人口の影響を取り除いた分析方法の必要性が明らかとなった。最終年度となる平成25年度は、それまでの成果を活用し、「電子化の進捗傾向」と「他の自治体の動向」の関係について分析を進めた。そして、得られた結果から、効果的な政策案を類推した。 本研究から、まず、人口が少ない自治体の支援を支持する結果が得られた。また、行政情報サービスのような、住民から注目されやすい項目については、手本となるモデル自治体を設置することを支持する結果が得られた。一方、情報マネジメントのような、住民から見えにくい項目については、モデル自治体の設置を支持する結果は得られなかった。これらの政策案については、具体的なデータと関連づけて言及されたことがなかったことから、研究の新規性が認められる。 ただし、本研究から得られた知見は、平成20年度から平成23年度までの近畿地方のデータから、探索的に得られた仮説に過ぎない。精緻な統計モデルによる検証と一般化が、今後の課題として明らかとなった。
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