研究課題/領域番号 |
23500314
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研究機関 | 熊本県立大学 |
研究代表者 |
津曲 隆 熊本県立大学, 総合管理学部, 教授 (90163881)
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キーワード | サービスラーニング / 地域活性化 / フィールドワーク / 電子書籍 / ソーシャルメディア |
研究概要 |
平成23年までに学生ボランティアは地域に入り込むことに成功した。平成24年度は、地域住民との信頼関係を築いた後、地域情報発信のためのソーシャルメディアサイト「菊陽三ちゃんねる」を構築し、このサイトを拠点に地域資源(ヒト・モノ・コト)を素材にした情報発信を継続的に行った。地域から取材してきた情報を、地域情報番組として放送し、情報拡散していくことは地域商店街の活性化に寄与しつつ同時に学生たちはそれによって情報発信のスキルを開発していくことになった。 取材と発信という二つの活動を通して学生たちと地域との間にはWin-Winの関係が構築され、この関係を通して、対象地域に対し、近年の新しい情報化の潮流としての電子書籍やソーシャルメディアといった知識が伝播していった。情報化とその活用の重要性が理解された結果、平成24年度末には地域住民から招かれ、商店街加盟店舗の総会において、情報化ツールの意義を学生たちが紹介するまでに至った。この事実は地域住民に変化が起きたことを意味し、地域情報化の進展に向けた学生ボランティアが効果的であることを示すものであると言える。 平成24年度、Win-Winの活動が生じた根拠を学生及び地域住民の動きを参与観察し、その分析から、この活動が活動理論の第3世代に妥当することを明らかにし、本取組の分析枠組みを得た。それにより、相互作用する二つの活動システムがそれぞれの対象を拡張して新たな対象を生み出す過程を生み出すことが、地域情報化を進行させる必要条件になることがわかった。さらにまた、その過程を生成するには、二つの活動システムを媒介する構造が必要であり、その構造による制約によって情報化への進展の動きが作り出されるとの仮説にまでたどり着いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、学生ボランティアによるサービルラーニングが1年間かけて実施し、学生及び地域にみられた変化について収集したデータをもとに「研究実績の概要」において述べたような知見を論文として公表した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、これまでに作り上げてきたツールを利用して、学生ボランティアによる地域情報の発信活動を継続し、それを通した学生と地域との変化の参与観察を継続する。この観察を通して、これまでの知見の妥当性をチェックするとともに、前年度において示唆された活動生成のための媒介構造について、観察データを基に研究を進め、ボランティアを用いた新しい地域情報化の進め方についての方法論をまとめる予定である。 なお、上記研究の他に、計画当初は視野に入っていなかった継続性に関する研究を追加で行う予定でいる。学生ボランティアは基本的に進級・卒業があり1年間で別のボランティア集団と交代する。本研究において活動していた学生ボランティア集団もそうであった。革命であれば別であろうが、一般には地域とは徐々にしか変化していかないものである。地域情報化でもそれは同様であり、変革には一定の期間を要する。その変革の期間、新しいボランティアは以前の文化やスキルを引き継いで活動していくことが地域から見た時には望ましい。ボランティアという任意集団において文化やスキルの伝達について、新しく活動する学生ボランティアを参与観察することで継続性について一定の知見を抽出していく予定である。 以上、継続性の問題についても一定の成果を出し、それを盛り込んだ形で平成25年度は研究を総括する。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでに必要なものはすべて構築したので、予算は基礎文献の入手及び消耗品購入に使用する予定である。
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