平成24年度までに、学生コミュニティである活動システムAを地域に入り込せ、それから地域の取材を行い、ソーシャルメディアを通して発信を続けてきた。平成25年度は、新しい教育活動の影響で、地域住民から自発的に新たな情報発信のための活動が生成されたのである。地域商店街が中心になり、家庭生ごみをたい肥に変えていくエコ活動を行う事業が始められ、そこを拠点に地域コミュニケーション(住民はそれを「ごみニケーション」と呼んだ)を生み出すことを狙ったものであり、学生と協力して運用が行われた。 発案者のひとりは「学生さんがこの地域にやって来られ、外からの眼で見られることになり、そのことで私たちは影響を受け、変わりました」とインタビューに答えており、学生たちの取材と発信という継続的な試みが重要であることを示している。ユーリアエンゲストロームが、組織変革のための方法としてチェンジラボラトリーなる手法を提案しているが、そこで重要な役割を担うのがミラーと呼ばれる、関係者に対する現状の認識ツールであった。ここでは、学生たちの取材と発信活動の継続が重要なミラーとして機能したと言える。これは商業メディアでは不可能であろう。 地域の変革には長い時間が必要である。それゆえ世代交代をする学生ボランティアには継続性が必須となる。この点については参与観察から前の世代からの単なる引き継ぎという形だけでは、継続性は難しいことがわかった。特に活動テーマについてはその世代の学生ボランティアが独自なものを見出していかないと、活動が停滞することがわかった。活動システムは共同体、ルール、分業、道具、目的といった要素からなるわけであるが、少なくとも目的は独自に設定しないと活動が大きく停滞していくことが観察された。継続性の問題に関しては今回は十分な検討を行えなかった。活動システムの継続性という新たなテーマとして次の機会に研究していきたい。
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