研究課題/領域番号 |
23500315
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
中泉 拓也 関東学院大学, 経済学部, 准教授 (00350546)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 会話型知識 / インセンティブ / 行動経済学 / 学際研究 / WEB実験 |
研究概要 |
本年度は、前回の科研の研究結果に加え、日本証券財団の助成による研究結果について分析を行うのに加え、不完備契約理論の研究、新たなWEBでのフィールド実験、大学での実験の準備のための研究を行った。 前回の科研では選ばれた編集者が行った編集結果を、チャットの参加者に評価させるという相互評価を導入し、編集者の報酬が評価が低いと半分に減額されるというインセンティブ報酬を導入した。また、インセンティブの効果を検証するために、2,000円 (20ドル)及び8,000円 (80ドル) 異なる2種類の金銭インセンティブを課すこととした。 その結果、むしろ高い報酬のほうが、低い評価につながるという、理論的な予測とはまったく逆の非常に興味深い結果を得た。また、これは評価者の行動経済学的評価行動が大きく起因していることも指摘することができた。 日本証券財団の助成による研究では、新たなモニターによる外部評価を追加で行うことで、この点を明らかにした。すなわち、編集者の属性や報酬を熟知している評価者である参加者と、報酬等を知らせずにスレッドの状況のみを知らせた外部評価者との評価の差を分析することで、報酬などが評価にどのような影響を与えるかを分析するものである。 本年度は上記研究の結果について分析し、次年度以降の実験につなげることを主要な研究テーマとした。結論として、評価者にインセンティブを与えないもとでは、編集者の努力インセンティブが小さく、報酬の有無によって、編集結果の質は大きく影響されなかった。反面、高い報酬の編集者への評価は有意に低いという結果が得られた。これは編集物の質だけでなく、報酬等の要素を参加者が加味しているという、従来の結果が依然として興味深いことを示している。この点をより分析することが今後の課題とされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は従来実験の分析を行うことを主要なテーマとした。その結果、前述のように高い報酬の編集者への評価は有意に低いという結果が得られた。これは編集物の質だけでなく、報酬等の要素を参加者が加味しているという、従来の結果が依然として興味深いことを示している。この点をより分析することが今後の課題とされた。 加えて、次年度以降の実験の設計に加え、関連研究の研究結果を報告し、更に新たなフィールド実験についても計画を設計することが出来ており、おおむね順調に推移していると考えてよい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は上記分析を進化させるための計量分析に力点を置くのに加え、ラボでの実験や行動経済学的商品選択理論のフィールド実験を行い、より研究を進化させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、従来実験の設定で、より評価者へのインセンティブを高めた設計の上で、ラボでの実験を行う。そのための支出として謝金を50万円程度を予定している。また、行動経済学的商品選択理論に対するフィールド実験を行うことを検討しており、そのための業務委託費用を50万円程度、追加の実験の業務委託費用を100万円程度とする。更に、専門知識の提供のための謝金、海外学会、海外での専門家との協議のための旅費を30万円程度計上する。
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