本研究課題では,移動ロボットに連結したプロジェクタとカメラを用いて実物体の全方位からフレキシブルに協調投影する複合現実感ディスプレイを構築し,このディスプレイを用いてプロダクトカラーについてのデザイン支援システムを実現することを目的として研究を遂行してきた.提案したシステムでは,販売促進の観点から3つのカラー要素に基づいてデザイン候補を自動算出し,実製品の現実感を保持したまま最小限のプロジェクタの協調動作により高品質な色変更を仮想的に実現していくことが特徴である.この研究目的に対して,初年度(平成23年度)は複合現実感ディスプレイの構築としてプロジェクタとカメラの幾何学・光学キャリブレーション、高品質な色再現のためのプロジェクタの投影像の推定、移動ロボットの制御による複数プロジェクションについて実施した.これに引き続き2年目(平成24年度)は,プロダクトカラーのデザイン候補の導出として既存の画像データを用いて感性キーワードに対するカラーリストを算出し,このリストからカラーを色空間にマッピングしてカラー候補を絞り込んでいく手法について提案および実施した.最終年度である今年は,この両システムを統合し,デザイン開発者の操作パネルにプロダクトカラー候補の一覧や絞り込み内容を表示するためのユーザインタフェースを構築した.また,操作パネル上で仮想的なプロダクトカラーの提示を実現した.さらに,プロダクトカラーの算出結果およびシステムの色再現性について評価として被験者実験を行った.この評価実験により,本手法が色再現性を重視しながらプロダクトカラーを変更できていることを確認することができた.
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