研究課題/領域番号 |
23500319
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 |
研究代表者 |
田良島 哲 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部調査研究課, 課長 (60370996)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 古筆切 / 紙背 / 古文書 / 古典籍 / 史料学 |
研究概要 |
1 古筆切原本の調査及び情報の収集 東京国立博物館所蔵の古筆手鑑3件及び寄託品の手鑑3件、九州国立博物館所蔵の手鑑1件及び京都国立博物館所蔵の手鑑1件について精査し、紙背の有無を確認した。また古筆関係の影印本等、既刊の資料を調査するため、一部、当館で未所蔵の書籍については、新規に購入した。東京国立博物館所蔵の手鑑1件及び九州国立博物館所蔵の手鑑1件については、高精細デジタル画像を撮影し、今後のより詳細な調査に備えた。2 研究の成果(1)調査した手鑑は写真で確認したものも含め、いずれも多くの断簡(切)を含むが、ほぼ必ず紙背のあるものを含んでおり、紙背のある古筆切がかなりの数存在することが、確実に想定される。(2)東京国立博物館所蔵の古筆手鑑(所蔵品番号B-13)の中に、紙背(二次利用面)に墨書のある複数の中世の書状が含まれており、極め札ではそれぞれ時代の異なる別の筆者とされていた。ところが、画像処理を行って検討した結果、これらはすべて、同一の袋綴装の典籍の料紙であることが判明した。内容は引き続き判読しているが、説話集「三外往生伝」の鎌倉時代の写本と考えられる。このことから、手鑑編纂時に編纂者の手元に典籍があり、これを解体して典籍の紙背(一次利用面)について、書風や内容にふさわしい別々の筆者を充てたと推定される。従来、手鑑の中でもこの種の書状は、時代や作成背景を知ることが困難であったが、紙背との関連を検討することによって、これらの状況を推定できる可能性があることが明らかになった。また、上記手鑑には、他に「平家物語」の異本と考えられる紙背(二次利用面)のある書状も含まれていた。古筆切の紙背の内容がかなり多様であることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
古筆切紙背の確認については、研究開始前に予想したとおりに進んでおり、23年度に調査した物件及び既存の資料等の調査結果については、今後、作成を計画している網羅的なリストの中に生かす予定である。 一方で、謝金等により既刊資料の確認を行わせるための適切な担当者を得ることが困難であったため、平成24年度に予定していた館内の手鑑の撮影を先行して実施した。
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今後の研究の推進方策 |
1 古筆切紙背の史料的な意義については、研究成果が得られつつあるので、今後は実例の増加を図るため、原本調査と情報収集の充実を図る。2 得られた実例を類型化、分析し、史料学的な意味を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1 平成23年度は、謝金の支出による既刊資料の調査ができなかったため、一部次年度使用額が生じた。これについては、平成24年度に可能なかぎり集中して実施する。
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