研究課題/領域番号 |
23500323
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
原田 悦子 筑波大学, 人間系, 教授 (90217498)
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研究分担者 |
須藤 智 静岡大学, 大学教育センター, 講師 (90548108)
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キーワード | cognitive aging / learning process / 顕在/潜在過程 / GMLT グルトン迷路課題 / strategy / transfer task / 血行力学反応 SBP / 手がかり意味の検出 |
研究概要 |
社会の高齢化と情報化が急速に同時並行的に進む日本社会において,高齢者にとって「使いやすい」人工物デザインの解明が喫緊の課題となっている.そこで本研究では,その認知的要因として最も大きな問題であると考えられている「人が新しい人工物の利用学習をする際に生じている,背後にある洗剤論理構造の学習」について,それがどのように行われているのか,その過程において加齢の効果がどのように生じているのかを明らかにするため,神経心理学的テスト課題の一つGroton Maze Learning Test(GMLT)における学習過程を明らかにしてきた.発話思考法に基づく分析から,年齢群により学習方略が異なることが明らかにされ(H23年度),顕在性の低い埋め込み手がかりやエラーレス学習条件の効果による分析(H24年度)を介して,H25年度は相対的にわかりやすい埋め込み手がかりを用いた実験を実施したところ,1)手がかりの存在により高齢者群の成績は格段に上昇するが,年齢群間差は残り,また転移課題での結果などからも,高齢者と若年群とでは手がかりの利用方法が異なる可能性が示唆された;2)今年度の実験で追加した連続血圧測定の結果から,高齢者は手がかりの存在で「より積極的な」課題取り組みに転じた可能性が示され,それに対し若年群手がかりあり条件では「非常に消極的」な課題解決をしており,その結果,偶発課題としての正解経路再生課題の成績にも「手がかりの有無による効果が年齢群によって逆転する」現象を示した.これらは,潜在的な手がかりの意味を検出していく過程に年齢差があることを示唆していると考えられ,その「意味の検出」過程にさらに注目する研究への展開が必要であることが示された.高齢者の中に,最後まで手がかりの意味を把握できずに終了した参加者もいることから,その発生機序も含めさらに検討をしていく予定である.
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