研究課題/領域番号 |
23500326
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
小俣 昌樹 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (60402088)
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キーワード | 情動推定 / 感情価 / 覚せい度 / 生体信号 |
研究概要 |
本研究では,今年度,前年度までに設計した情動の感情価推定モデルおよび覚せい度推定モデルに基づいて,コンピュータユーザの脳波,脳血流,呼吸,脈波などの生体信号から感情価と覚せい度を推定し,それを色の色相や彩度および囲み線の形状に反映させるシステムを設計・実装した.具体的には,感情価と覚せい度の値をマンセル表色系に対応づけて色を決定し,覚せい度の値を囲みの頂点数や鋭角の程度に対応づけて形状を決定し,これらを組み合わせて感情を表現する.この方法は,今後開発していく本システムにおいて,Webページを閲覧しているユーザの生体信号から情動(感情価と覚せい度)を推定して,その情動をWebページ上に重畳する方法のひとつとなる. また,これまでに設計した情動推定モデルにおける感情の種類を検証するために,ユーザビリティテストにおけるパフォーマンス評価実験を行ったときのユーザの感情と生体信号およびその評価結果との関連性を調査する実験を行った.この実験の結果,評価結果は,脳波のθ波とβ波,脈拍数,呼吸の振幅,および皮膚伝導率に関連すること,また,これらの生体信号は,敵意,驚愕,抑鬱・不安,活動的快,疲労感,緊張と興奮,および抑鬱感の感情に関連することがわかった.この実験結果によって,これまでに設計してきた感情価と覚せい度の2次元感情モデルに基づく推定モデルにおいて,その程度だけでなく,感情の種類も推定できるモデルへと発展させることのできる可能性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までに設計した情動の感情価および覚せい度を推定するモデルを使用して,情動を色や形で表現するシステムを設計し,実装できたことから,おおむね計画通りに進められていると考える.
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今後の研究の推進方策 |
ひきつづき,情動の感情価と覚せい度を推定するモデルを設計していき,精度を向上させたり情動の種類の推定したりできるモデルへと発展させることを目指す.また,Webページへ情動を重畳表現するシステムを設計・構築し,重畳することによる閲覧者の情動への影響およびユーザビリティへの影響を検証する.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度における研究費の実績が計画よりも少なかった理由は,ほぼ,当初計画の設備備品予算,消耗品費予算,および旅費等予算の通りに執行していったうえで,これらと実際に支出した金額との差額が生じたためである. 一方,これまでの研究により,脳波や脳血流の有効性が解明されてきたので,この成果に基づき,次年度は,本年度の残額と次年度予算とをあわせて,これらのセンサを追加購入しチャネル数を増やしたり,さらに別種のセンサを追加購入して分析する生体信号の種類を増やしたりし,推定モデルの精度を向上をすることを計画する.あわせて,本年度までに設計したモデルを提案システムに実装したりそれらの評価実験を実施したりするために,PCなどの開発・分析機器も購入する予定である. また,これまでの研究成果を国際会議や論文誌等で発表することへも取り組むため,これらの旅費や登録費および投稿料などとしても使用する予定である.
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