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2011 年度 実施状況報告書

マンドリルの認知と記憶に関する比較研究

研究課題

研究課題/領域番号 23500328
研究機関京都大学

研究代表者

田中 正之  京都大学, 野生動物研究センター, 准教授 (80280775)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードマンドリル / 比較認知 / 視覚的選好 / 作業記憶 / 系列学習 / チャンキング
研究概要

本研究は動物園で飼育される多様な霊長類を対象として、比較認知科学的観点から研究をおこなうことを目的とする。今年度は、これまで認知研究が進んでいないマンドリル(Mandrillus sphinx)を主な研究対象とし、大型類人猿であるチンパンジーと小型類人猿であるテナガザルを比較対象とした、タッチモニターを使った実験的研究をおこなった。実験は京都市動物園で飼育されている個体を対象におこなった。前年度に成体オス個体が死亡したために、マンドリルについてはメス個体のみの群構成となった。このためオスのマンドリル特有の色彩に対する選好性のテストを、新しいオス個体が導入される予定の次年度に延期し、個体レベルでの学習・記憶能力を調べる課題を実施した。ただし、対象群として、チンパンジーにおいて霊長類各種の写真を使用した選好性テストを実施し、動物園の飼育個体においても実施可能なことを確認した。マンドリルに対しては、アラビア数系列の順序を学習する課題を実施し、子ども2個体が1から7までの7数字の系列学習を獲得した。この2個体を対象に、松沢ら(Kawai & Matsuzawa, 2000; Inoue & Matsuzawa, 2007)がチンパンジーでおこなった、数字の提示位置に関する作業記憶課題を実施し、比較実験をおこなった。課題は1から5または6までの数字をタッチモニター画面上の疑似ランダムな位置に提示し、被験者が1に触れた直後に2以降のすべての数字が同じ市松模様でマスクされるが、元の数字の順に触れば正解となり、報酬が得られる。この実験の結果、被験者のマンドリルは2個体とも、2までは正解率も反応時間も、数字がマスクされない条件と差がなく、3以降で正解率、反応時間とも有意差が見られた。結果から、マンドリルは最初の2数字までをチャンクとしてまとめて認識していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

視覚的好みの実験は現在準備中であるが、同時に行う予定であった学習課題が予想以上に順調に進み、マンドリル2個体では作業記憶のテストまで初年度に実施することができた。視覚的好みのテストについても、動物園飼育のチンパンジーで課題評価のための実験をおこない、霊長類研究所のように実験への馴致が進んでいる個体以外でも、実施可能なことが確認できている。マンドリル以外の学習課題習得については、チンパンジー、テナガザルとも、マンドリルと同等程度まで習得が進んでいる。一方で数字をマスクする条件では3系列程度でも成績が伸びず、現在訓練中である。学習に時間がかかることは想定しているので、1年終了時点では、おおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

H24年度には、京都市動物園に新しいオス個体が導入される予定である。この個体の導入を待って、視覚的好みのテストをスタートさせる予定である。また、タッチモニターに反応しない個体に対する対策として、視覚提示に対する注視時間等の別指標を用いたテストを導入し、被験者数を増やしていく。この方法論を京都市動物園での飼育個体で確立させた後に、国内の他の動物園において同様のテストをおこない、結果の信頼性を高めることを目指す。マンドリルの記憶に関する認知研究としては、今年度に引き続き、系列長を7まで伸ばした作業記憶課題を実施すること、およびマスクするタイミングを変えた条件でのパフォーマンスを比較分析することで、マンドリルの作業記憶方略を明らかにしていきたい。さらに、H24年度には、新たな被験者として、H23年末に生まれたゴリラの赤ん坊の参加を見込んでいる。現在人工保育中であり、幼い頃よりタッチモニターに馴らすことにより、今後も長期継続的な認知研究の実施が可能となると期待できる。

次年度の研究費の使用計画

タッチモニターは消耗的に使用されるため、3か月程度での交換が必要となる。本年度は4台のタッチモニターを購入した。本年度と同様に、研究費は次年度も交換用のタッチモニターの購入にあてる。また、提示刺激の撮影のためのカメラおよびその付属品、さらに保存用のハードディスクなども購入予定である。今年度はメキシコで行われる国際霊長類学会での成果発表のために旅費を使用する。また、国内でマンドリルを飼育している他施設での実験の可能性を探るための国内調査旅費を使用する予定である。また、対象種数、対象個体数が増えることにより、研究を推進していくためには実験実施のための補助者が必要となる。このための費用を謝金として計上する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Chimpanzees' flexible targeted helping based on an understanding of conspecifics' goals.2012

    • 著者名/発表者名
      Yamamoto, S., Humle, T., Tanaka, M.
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences

      巻: 109 ページ: 3588-3592

    • DOI

      10.1073/pnas.1108517109

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Long-term visual recognition of familiar persons, peers, and places by young monkeys (Macaca fuscata).2011

    • 著者名/発表者名
      Murai C, Tanaka M, Tomonaga M, Sakagami M
    • 雑誌名

      Developmental Psychobiology

      巻: 53 ページ: 732-737

    • DOI

      10.1002/dev.20548

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Physical intuitions about support relations in monkeys and apes.2011

    • 著者名/発表者名
      Murai C, Tanaka M, Sakagami M
    • 雑誌名

      Journal of Comparative Psychology

      巻: 125 ページ: 216-226

    • DOI

      10.1037/a0022099

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Executive function in young children and chimpanzees (Pan troglodytes): Evidence from a non-verbal Dimensional Change Card Sort task.2011

    • 著者名/発表者名
      Moriguchi Y, Tanaka M, Itakura S
    • 雑誌名

      Journal of Genetic Psychology

      巻: 172 ページ: 252-265

    • DOI

      10.1080/00221325.2010.534828

    • 査読あり
  • [学会発表] マンドリルの系列学習課題遂行時の作業記憶2011

    • 著者名/発表者名
      田中正之
    • 学会等名
      日本心理学会第75回大会
    • 発表場所
      日本大学(東京都)
    • 年月日
      2011年9月15日
  • [学会発表] 飼育下マンドリルにおける学習行動の文化的伝播.2011

    • 著者名/発表者名
      田中正之, 山下直樹, 高井進, 山本裕己
    • 学会等名
      第27回日本霊長類学会大会
    • 発表場所
      犬山国際観光センター(愛知県)
    • 年月日
      2011年7月18日
  • [図書] 幸福感を紡ぐ人間関係と教育2012

    • 著者名/発表者名
      田中正之(分担執筆)
    • 総ページ数
      244(うち163-178)
    • 出版者
      ナカニシヤ出版

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公開日: 2013-07-10   更新日: 2013-08-28  

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