研究課題/領域番号 |
23500329
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
野村 理朗 京都大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (60399011)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 衝動性 / 運動反応 / 報酬 / 罰 / セロトニン / ドパミン / 遺伝子多型 |
研究概要 |
本研究課題は衝動性の制御メカニズムについて,脳領域間の情報伝達を担うセロトニンの機能およびこれを調節する遺伝子多型(gene polymorphism)に着目し,多様な技法(行動実験・脳機能計測・遺伝子解析)により,個人差に関わる包括的な視点から,メカニズム詳細を解明することを目的としている。平成23年度は,運動反応制御の不全を示す衝動性(response inhibition impulsivity)に注目し,セロトニン・トランスポーター遺伝子多型との関係性について検討した。実験では,Go/Nogo課題,すなわち提示中の運動反応を正解とする刺激(Go条件),あるいは提示中に反応を抑制することを正解とする刺激(Nogo条件)として,各々にランダムに割りあてられた数字を提示した。柔軟かつ速やかな運動反応の制御が求められるこの課題では,反応が正解であった場合には金銭の報酬を与え,間違いに対しては罰として報酬を差し引くことにより,Nogo時に思わずボタンを押してしまうという衝動的エラー(commission error)を誘発するものである。実験の結果,誤反応にリスクがともなう文脈において,SS型の誤反応数はSL型よりも少ないことが示された。本研究結果より,従来不適応であるとされてきたSS型が,他方,適応的な側面を有するというそのあり方にかかわる新知見が示された。すなわち,遺伝的形質に伴う脆弱性と適応的な両面について,今後も注目し,明らかにする必要が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の基礎となる遺伝子多型のデータベース作成が順調に進展していること,およびこれを利用した実験課題で成果が得られたことから,上記のように判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は解析ターゲットとした各種遺伝子多型と、行動指標との関連について、多面的に解析を実施する予定である。特に平成24年度は以下の研究課題を遂行する。目的: Go/Nogo課題を実験課題として、事象関連電位とNIRS指標の同時測定により脳活動の時空間的側面から、衝動的反応の抑制機構へのセロトニン遺伝子多型の影響について検討する。方法: 実験参加者:健常な大学生120名 実験デザイン:5条件の被験者内計画:1)報酬条件(reward-only):正解で報酬、不正解であっても無罰、2)罰条件(punishment-only):正解であっても無報酬、不正解で罰、3)報酬・罰条件(reward-punishment):Go反応(正解で報酬)、Nogo反応(不正解で罰)、その他は無報酬・無罰、4)罰・報酬条件(punishment-reward):「報酬・罰条件」と逆のフィードバック条件、5)統制条件(control):無報酬・無罰 ・指標:・遺伝子多型4群(5-HTTLPR(SS, L保持型)×5-HT2AR(AA, G保持型)):120名 (遺伝子多型解析結果のサンプル・プールより各群30名を抽出する)・行動指標:反応時間、誤答率(CER、OER)・脳活動の指標:事象関連電位、脳血流量(oxy-Hb、deoxy-Hb)の変化を同時計測
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年については研究成果を公表し、最終的な研究成果へと反映させるための、国内学会4回、海外で開催の国際学会2回への参加旅費に使用する。また、NIRSおよびfMRIによる脳画像撮像につき、実験参加者への謝礼を1時間800円として計上し、使用する(NIRS: 120人(各群30名)×2時間、fMRI: 60人(各群20名)×8時間)。さらに、研究成果を評価の高い国際的学術雑誌に投稿するために、各年度において英文の校閲費として使用する予定である。
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