研究課題/領域番号 |
23500331
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
内山 博之 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (70223576)
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研究分担者 |
大野 裕史 鹿児島大学, 理工学研究科, 助教 (00363606)
松谷 伸二 北里大学, 看護学部, 教授 (60219433)
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キーワード | 視覚 / 注意 / 標的選択 / 到達運動 / 網膜神経節細胞 / 双極細胞 / 遠心性制御 / 視覚消失 |
研究概要 |
1.向網膜系の視覚探索における役割 視覚探索課題を学習させた動物の向網膜神経核にGABA作動薬であるムシモールを微量注入し,向網膜系の機能を可逆的に不活性かさせて,視覚探索への影響を観察した.ムシモールの注入によって,妨害刺激存在下の競合的探索において,正答率の低下が見られた.これは,向網膜核損傷後に見られた現象に類似しており,向網膜ニューロンの不活性化自体が,標的選択の精度を低下させることを明確にした.向網膜神経核損傷による標的選択の精度低下の結果の論文が受理され出版された(Behavioural Brain Research 233 (2012) 359-366). 2.向網膜系の網膜内神経回路の解析 向網膜系は,網膜の出力細胞である網膜神経節細胞 (retinal ganglion cell, RGC) の視覚応答を一過的に増強することがわかっているが,向網膜系の3次ニューロンであるIO標的細胞は,RGCと直接シナプスしない.このようにIO標的細胞によるRGCの遠心性調節は,網膜固有の細胞によって中継されなければならない.24年度の研究でPKC陽性双極細胞が,IO標的細胞の軸索終末とシナプス結合している可能性が免疫組織化学的手法によって示された.このシナプス結合の可能性を電子顕微鏡的観察による検証を開始した. 3.両眼視野刺激装置の作成 側方に眼を持つ動物のパノラマ的な広い視野に視覚刺激を呈示するための装置を作成した.これによって向網膜系の選択的注意への寄与を視野のより広い範囲で計測できるようになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IO標的細胞がどのような神経回路を介して網膜神経節細胞 (RGC)に影響するのか全く不明であったが,PKC陽性双極細胞が中継している可能性が明らかとなったことは,極めて重要な知見である.電気生理学的研究と行動学的研究もほぼ順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
1.向網膜系の網膜内神経回路の解明 最重要項目として研究する. 2.電気生理学的研究 頭部搭載カメラを用いて,向網膜ニューロンの受容野測定と頭部運動方向検出を行い,向網膜ニューロンの活動と頭部運動との関係を明らかにする. 3.行動学的研究 両眼視野刺激装置を用いて,向網膜神経核の薬理学的不活性化によって,視野の広範囲に呈示した標的刺激の視覚探索がどのような影響を受けるかをあきらかにする.
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次年度の研究費の使用計画 |
発注していた試薬の国内在庫がなく海外発注となったこともあり,1万円以下ではあるが未使用金が生じた.これは25年度の予算に組み入れて執行する. 25年度は最終年であり,そのほとんどを研究継続のための消耗品等の購入費である物品費として用いる予定である.
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