• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

注意の片寄りによって生じる知覚抑制が「ヒヤリハット」の要因となる個人特性の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23500332
研究機関大阪府立大学

研究代表者

浅田 博  大阪府立大学, 高等教育推進機構, 准教授 (50151030)

キーワード前頭部シータ波 / ヒヤリ・ハット行動 / 注意の過集中 / wavelet解析 / 周辺視野情報認知 / 共分散構造分析
研究概要

24年度に周辺視野刺激時の脳波計測を実施した25名における文字刺激と文字認知の時間関係を個別に精査したところ、ゲーム作業中の上下左右への眼球運動、および瞬目の発生と関連して前頭部に出現する低周波のアーチファクトがシータ成分を含んでいることがわかった。そこで、それらのアーチファクトと本来の脳活動によるシータ波を識別するため、視線追跡装置を装着した状態で、同様の実験を行った。得られた脳波記録とともに、同時記録をした視線の動き、上下左右への眼球運動記録、をオフラインでウェーブレット時間周波数解析処理を行った。
その結果、これらのアーチファクトと関連して前頭部に波及して同時に記録されていると思われるシータ成分を除外し、それらとは時間的に独立して発生していると思われる本来の脳活動によるシータ成分を識別することが可能となった。その新基準をもとに、ゲーム中に前頭部シータ波の出現する被験者と全く出現しないについて、周辺視野刺激に対する識別認知度を比較したところ、シータ波出現者(15名)ではゲーム中、シータ波非出現者(10名)に比較して有意に周辺視野に対する文字認知度が低いことが明らかとなった。
これらの結果を元に、前年度に作成し実施した実際の日常生活におけるヒヤリハット度アンケートやその他の性格検査の結果に対し、共分散構造分析を行ったところ、被験者の「ヒヤリ・ハット行動」や「うっかり度」の自覚が、シータ波の出現の有無と有意に逆相関している結果が得られた。このことはシータ波出現者は、注意を向けている事象以外の刺激に対する認知度は低いにもかかわらず、日常のヒヤリハット行動の自覚あるいは記憶自体が少ないことを意味している可能性がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

運転などの作業中の脳波記録では、眼球運動、瞬目、筋電図、体動などさまざまな脳波以外の要因によるアーチファクトの混入は避けられないが、それらを脳活動成分から除去するには複雑なプログラムや装置が必要である。前年度のwaveletを用いた方法はもっと簡便に脳波シータ成分のみを見分けることが可能であり、何らかの作業中での注意の過集中による周辺視野情報認知力の低下を早期に発見できる可能性がある。これは本研究の実作業への応用の可能性を示すものである。
一方、日常の「ヒヤリハット」経験頻度の高い被験者と頻度の低い被験者を抽出する方法についても再検討を行うため、過去の脳波測定者に対する調査活動は進んでいない。

今後の研究の推進方策

本年度の実験結果から、シータ波出現者は注意を向けている事象以外の刺激に対する認知度は低いにもかかわらず、日常のヒヤリハット行動の自覚あるいは記憶自体が少ない可能性が示唆された。当初の計画ではFmθ出現群における日常の「ヒヤリハット」経験頻度の高い被験者と頻度の低い被験者を抽出する予定であったが、今後は被験者の抽出の方法を再検討していく必要がある。
上記方法で実験協力に賛同の得られた被験者群を対象に、23年度に行なった周辺視野刺激装置を用いた知覚抑制検出実験を行う。
計測した多チャンネル脳波計測とゲーム画面の同時記録の解析を中心的に行う。Fmθ出現者に対し、作業遂行時の知覚抑制がFmθ出現者の個体差による特性であるのか、さらにはFmθ出現者であっても、Fmθ律動が出現しているときだけに対応した視覚抑制であるのか、あるいはFmθが出現する前後とも対応した特性であるのかを共分散分析などを用いて検討する。
本研究で明らかとなったFmシータ波出現者における周辺視野情報に対する認知抑制の頻度の多さは、さまざまな「うっかり」事故につながりやすい。そのような傾向のある人に対して個人の適度な注意力を維持することのできる「ヒヤリハット」防止フィードバックシステムの開発につなげることを目指す。

次年度の研究費の使用計画

被験者の「ヒヤリハット行動」の、より日常の実際の行動が反映できるアンケートを再度作成し、調査を行う。また、実験に用いる作業課題を、もっと集中度を高められる課題を選択し、再度の実験を行う。
そのための、被験者、実験補助者、に対する謝金を計上している。
また、得られた研究成果を25年度の国際学会にて発表する登録を既に済ませており、そのための旅費を計上している。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2013

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] Frontal theta activity and cognition of peripheral vision2013

    • 著者名/発表者名
      Hiroshi Asada
    • 学会等名
      Society for Psychophysiological Research, 53rd Annual Meeting
    • 発表場所
      Firenze, Italy
    • 年月日
      20131002-20131006

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi