研究課題/領域番号 |
23500333
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
牧岡 省吾 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (60264785)
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研究分担者 |
岡本 真彦 大阪府立大学, 人間社会学部, 准教授 (40254445)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 共感覚 / クロスモーダル / 数の心的表象 / 自己組織化 / ニューラルネットワーク |
研究概要 |
平成23年度は仮説「1)異種感覚次元間の自己組織化学習は非共感覚者においても行われている」について検討するために、非共感覚者を対象にして心理実験を行った。実験の方法については、交付申請書に記載したものに若干の改良を加えた。2つの数字をディスプレイ上に呈示し、同時に呈示する矢印と数の大小関係が一致するかどうかを実験参加者に判断してもらい、反応時間を測定した。画面上の数字の位置関係を変化させることで反応時間が数字ごとに異なる変動を示すどうかを分析することによって、非共感覚者において数と空間を対応づける自己組織化学習が行われているかどうかを検討した。さらに、2つの数字の差が1の場合(例:1→2,2→3)の反応時間の分布から、差が2の場合(例:1→3)の反応時間の分布を予測できるかどうかを分析することにより、反応時間の変動が空間的な属性を持つかどうかを検討した。加えて、個人内変動について分析するために各実験参加者に対して1週間の間隔を空けて2度の測定を行った。 結果は以下の通りだった。(1)数字の位置関係による反応時間のパタンは、数字の種類ごとに異なっており、さらに実験参加者間でも異なっていた。(2)反応時間の分布が空間的属性を持つことが裏付けられた。(3)数字の位置関係による反応時間のパタンは、同じ実験参加者でも1週間後に測定したときには変化していた。 結果(1)と(2)は、非共感覚者による数の大小判断が、空間的位置関係の影響を不規則な形で受けていることを示し、仮説を支持している。一方、結果(3)は、非共感覚者においては共感覚者と異なり空間的位置関係の影響が時間的に変動していることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、「1)異種感覚次元間の自己組織化学習は非共感覚者においても行われている」「2) 色字共感覚などナンバーフォームズ以外の共感覚においても自己組織化学習が行われている」という2つの仮説の検証を目的としている。現在までに、仮説1)について肯定的なデータが得られている。仮説2)についても予備的な実験を始めており、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
仮説「1)異種感覚次元間の自己組織化学習は非共感覚者においても行われている」について、更に確定的な証拠を得るために心理実験を行う。具体的には、数の大小判断課題について、矢印と大小関係が一致しているかどうかを判断させるマッチング課題と、大きい方の数を声に出して報告させる数字呼称課題の2つを同一の実験参加者に行ってもらい、2つの課題の反応時間の分布パタンが同様になるかどうかを検討する。もし同様な結果が得られれば、数字の表象と空間表象の間に一貫した関係性が存在することの強力な証拠となる。 更に「仮説2) 色字共感覚などナンバーフォームズ以外の共感覚においても自己組織化学習が行われている」を検証するために、数字を様々な色で呈示し、色名呼称課題および特定の数字(たとえば5)より大きいかどうかを判断させる課題を同一の実験参加者に行ってもらう。この実験においても数字と色との間に実験参加者内で一貫した傾向が見られ、かつそれが被験者間で異なっていれば、仮説2)が支持されると考えられる。 また、これまでに得られた数の大小判断に関する実験結果は、非共感覚者においては異種感覚間の関係性が時間的に変動している可能性を示唆している。この点についても上記の実験によって検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は実験環境の整備を優先し、予定していたシミュレーション及び分析用コンピュータの購入を行わなかった。平成24年度は、シミュレーション及び分析環境を整備するためにコンピュータおよびディスプレイ等の周辺機器を購入し(50万円程度)、さらに必要なソフトウェア類を購入する(10万円程度)。また国内学会への数回の出張(15万円程度)を行う。24年度は国際学会での研究発表を予定していないが、国際誌への投稿を予定しており、英文校閲を複数回(15万円程度)行う予定である。さらに呼称課題を用いた実験で録音結果の書き起こしが必要となるため、謝金(10万円程度)を支出予定である。
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