研究課題/領域番号 |
23500333
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
牧岡 省吾 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (60264785)
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研究分担者 |
岡本 真彦 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (40254445)
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キーワード | 共感覚 / クロスモーダル / 数の心的表象 / 自己組織化 / ナンバーフォームズ / 色字共感覚 / ニューラルネットワーク |
研究概要 |
平成24年度は、仮説1)異種感覚次元間の自己組織化学習は非共感覚者においても行われている、仮説2) 色字共感覚などナンバーフォームズ以外の共感覚においても自己組織化学習が行われている、の両方について心理実験による検討を行った。 仮説1)に関しては、非共感覚者を対象に、2種類の数の大小判断課題を用いて実験を行うことにより検討した。課題1(矢印課題)は、ディスプレイ上に呈示した2つの数の大小関係が同時に呈示された矢印の向きと一致するかどうかを答えるものだった。課題2(音声課題)は、ディスプレイ上に呈示された2つの数のうち、大きい方をできるだけ早く読み上げるものだった。これら2種類の課題について、2つの数字のディスプレイ上での位置関係と数字の種類が反応潜時に与える効果について検討した。その結果、以下の結果が得られた。1)どの数字ペアがどの位置関係で呈示されたときに反応が速くなるのかは、実験参加者ごとに異なっていた。2)同じ参加者の中で、矢印課題と音声課題の反応時間の分布は類似していた。3)同じ参加者の反応時間の分布は、2週間後に測定した場合も類似していた。以上の結果は、数の大小関係と空間的位置関係の間に、各参加者に固有な対応関係が存在し、かつその対応関係が安定していることを示唆し、仮説1)を支持している。 仮説2)に関しては、非共感覚者を対象に、様々な色で呈示された数字の音読潜時を計測することにより検討した。非共感覚者において色と数字の間に自己組織化学習が生じているならば、特定の数字においては、特定の色以外で呈示されたときには反応潜時が長くなるという、ストループ効果に類似した効果がみられるはずである。実験の結果、そのような効果は観測されず、仮説2)は支持されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「仮説1)異種感覚次元間の自己組織化学習は非共感覚者においても行われている」については肯定的な結果が得られているものの、数の大小関係と空間的位置関係の間の関係性が個人間で異なっていることに関する十分な証拠が得られておらず、学術雑誌への論文投稿が遅れている。 「仮説2) 色字共感覚などナンバーフォームズ以外の共感覚においても自己組織化学習が行われている」については否定的な結果が得られた。これが、ナンバーフォームズと色字共感覚の生起するメカニズムの違いによるものなのか、実験手続き上の問題であるのかを今後検討する必要があり、仮説2)の検証にも時間を要する。
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今後の研究の推進方策 |
「仮説1)異種感覚次元間の自己組織化学習は非共感覚者においても行われている」については、音声課題を用いた追加実験を行い、数の大小関係と空間的位置関係の間の関係性の個人差に関するデータを集める。課題を絞り込んで試行数を増やし、大量のデータを集めることによって、個人差に関する信頼性の高い証拠が得られるものと期待される。 一方、「仮説2) 色字共感覚などナンバーフォームズ以外の共感覚においても自己組織化学習が行われている」については、実験手続きを根本的に見直し、数字と色の相互作用がより出現しやすい心理実験の課題に関する検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、実験プログラム作成および論文執筆環境を整備するためにノート型コンピュータ(20万円程度)を購入予定である。さらに、国内学会(複数回)への参加旅費(15万円程度)、論文執筆時の英文校正費用(15万円程度)、実験参加者への謝金(10万円程度)を支出予定である。
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