研究課題/領域番号 |
23500335
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
清河 幸子 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (00422387)
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研究分担者 |
松香 敏彦 千葉大学, 文学部, 准教授 (30466693)
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キーワード | 行動実験 / 計算機モデリング / 洞察問題解決 / 潜在認知 |
研究概要 |
*行動実験 洞察問題の代表的な課題であるTパズルを用いて2つの行動実験を行った。実験1では,意識的にモニターできないプロセスが洞察問題解決に関与していることを確認した。実験2では,意識的な処理が無意識的な認知プロセスに与える影響を検討した。具体的には,サブゴールの熟考(意識化)を促すことが解決成績に及ぼす影響を検討した。実験の結果,課題達成率には有意な差がみられなかったが,解決に関与する制約の緩和および方略に影響が認められた。 *計算機モデリング 既存の多くの認知モデルでは,学習や問題解決の過程を単一のベクトルで表現された知識・方略の最適化として扱ってきた。本研究では,新たな試みとして,知識を「独立したノードが繋がり合ってネットワークを形成しているもの」と仮定し,学習・問題解決を「ネットワークを形成している個々の要素が相互作用しながら最適化・自己組織化されるもの」としたモデルを提案した。計算機シミュレーションの結果,多くのネットワークがその構造をもつと言われるsmall world network的な知識ネットワークが最適化されると,pareto optimalと呼ばれる,頑健で多様性があり,汎用性の高い知識が形成されることが示唆された。また,上記のモデルを応用して,複数の個人からなる社会での洞察問題解決やイノベーションの創発のメカニズムを再現する計算機シミュレーションを行った結果,他者の情報を利用することによって,問題解決のスピードを速めるだけでなく,多様なアイデアが創発することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた2つの行動実験を実施することができた。しかし,実験2については,課題成績に関して明確な影響が見られなかったことから,今回得られた実験群のデータを成績により分割し,再分析を実施することにより,調整要因を特定する必要がある。また,計算機モデリングについては,従来の研究とは異なる新たなモデルを提案することができた。行動実験を進めて,その結果を踏まえて,モデルを精緻化していく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
行動実験に関しては,実験2のデータを再分析した後,再度,意識的な処理が無意識的な認知プロセスに及ぼす影響を検討する。また,洞察問題とは異なる課題を用いて同様の検討を行うことにより,洞察問題固有のプロセスを明らかにする。計算機モデリングについては,今年度提案した枠組みを用いて,行動実験を行った先行研究により示されている現象の再現が可能であるかという点について,さらに検討を進める。それとともに,本研究の行動実験により得られた結果を踏まえて,モデルの精緻化を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験補助者に対する謝金,研究成果発表のための国内外への出張旅費および英文校閲代として使用する予定である。
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