研究課題/領域番号 |
23500346
|
研究機関 | 統計数理研究所 |
研究代表者 |
黒木 学 統計数理研究所, 統計数理研究所・データ科学研究系, 准教授 (60334512)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
キーワード | 正規線形回帰モデル / ロジスティック回帰モデル / 原因の確率 / 同時介入 / 共変量情報 / 存在範囲 |
研究概要 |
平成23年度は、(1)線形回帰モデルにおける弱併合可能問題、(2)潜在反応モデルに基づく原因の確率の評価問題,(3) 線形構造方程式モデルに基づく同時介入効果の定式化とその応用に関する研究、に取り組み、次のような結果を得た.(1) 正規線形回帰モデルにおける併合可能問題として,興味ある変数の回帰係数の符号が第三の変数の追加・削除によって変化しない条件を弱併合可能条件として定式化し,その十分条件が無向独立グラフから読み取れることを示した.(2) ロジスティック回帰モデルにおける併合可能問題として,興味ある変数の回帰係数の符号が第三の変数の追加・削除によって変化しない条件を弱併合可能条件として定式化し,これが正規線形回帰モデルのそれとは異なることを示した.また,併合可能条件を回帰係数の推定精度の問題から検討し,第三の変数を追加することで常に推定精度が低下することを指摘した.(3)原因の確率を評価する際の共変量情報の役割について議論し,交絡因子が同定されていたとしても原因の確率を識別できるとは限らないこと,その一方で共変量を導入することでその存在範囲を狭めることができることを示した.また,原因の確率の推定精度の観点から共変量情報の役割について検討し,反応変数の直接原因を解析に加えても推定精度が向上するわけではないことを指摘した.(4) 線形構造方程式モデルの枠組みに基づいて,最適な同時介入方式を定式化するとともにその性質を明らかにした.加えて,最適な同時介入方式の工程解析への応用可能性についても検討した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
23年度は,本研究課題に直接的に関係する4本の論文が国内外の学術誌に掲載され,将来的に本研究課題を進めるうえで有用であると思われる結果のひとつが国内の学術誌に掲載された.また,国際会議JSM2011と国内の研究集会SIG-FPAIにおいて招待講演を実施するだけでなく,本研究課題に関連する9つの研究テーマについて学会発表を行った.
|
今後の研究の推進方策 |
23年度半ばに統計数理研究所に赴任したこともあって,現段階では研究環境が十分に整備されているとは言いがたく,24年度は23年度ほどの研究成果を期待することは難しいと推察する.このような状況においても,10年近く参加しているテクノメトリクス研究会に引き続き参加・議論することで,幅広い学術的視野を取り入れるよう心がけていきたい.また,BSネットワークや統計数理セミナーに参加し、議論することで統計的因果推論の実質科学的応用を模索していきたい.加えて,海外の研究者との共同研究として,北京大学のGeng教授, UCLAのPearl教授との共同研究を積極的に推し進めて行きたいと考えている.
|
次年度の研究費の使用計画 |
24年度の後半に北京大学またはUCLAを訪問し,共同研究を実施したいと考えている.そのため,24年度研究費の多くを,渡航費用および訪問先での共同研究を成功させるための備品の購入にあてたいと考えている.
|