平成26年度は、(1)未観測交絡因子が存在する場合の因果効果の識別可能性問題、(2)中間変数を利用した因果効果の推定問題、に取り組み、次のような結果を得た。 (1) 単一観察研究内においては未観測交絡因子に対する複数の代替変数を観測する、複数の観察研究を利用する場合にはパイロットスタディの結果を利用することで因果効果を推定するEffect Restoration Methodを開発し、因果効果の識別可能条件を大幅に拡張した。また、線形構造方程式モデルのフレームワークにおいて、因果効果の識別可能条件を二段階で適用することで、既存の識別可能条件とは異なる結果が導かれることを示した。(2) 興味ある変数がすべて離散型確率変数である状況において、中間変数を用いて因果リスクを推定する問題を考え、処理変数から反応変数への直接効果がない状況においては中間変数を用いた二段階推定を利用することで因果リスクの推定精度が向上することを示した。二段階推定を用いて因果リスクを評価する際の中間変数の選択指針を与えた。
|