研究課題
最終年度は,新たな母数モデル「データ=共通因子×負荷+独自因子×独自分散の平方根+誤差」に基づく同時因子分析について,数理的性質の考究を行った.まず,最小化すべき誤差二乗和が,共通・独自因子得点行列とデータ行列の後ろから負荷・独自分散平方根からなる行列を乗じた積の差の二乗ノルム,および,因子得点に関係ない項の和に書き換えられることを示して,データ行列よりも階数の高い共通・独自因子得点行列が前者を近似する問題,つまり,高階数近似として因子分析を定式化できることを明確化した.これは低階数近似問題とみなされる主成分分析と好対照をなす.さらに,共通・独自因子得点行列の解は一意に定まらないが,その解が,データ行列の列ベクトルの一定の線形結合を中心とした円錐を構成することを証明した.これは,共通因子得点の不確定性を示した既存のMulaikの円錐を,独自因子得点まで考慮して一般化した円錐と位置づけられる.以上の理論研究に加えて,同時因子分析の解法は,既存の最尤法とは一見して相当異なるために,直感的には同じ因子分析の範疇に含められるかという疑問を呈するので,シミュレーションによって同時因子分析と最尤因子分析がほぼ同等の解を与えることを確認した.研究期間全体を通じて,冒頭に記した同時因子分析を考案して,最小二乗法および重みつき最小二乗法のアルゴリズムを開発して,シミュレーションによる挙動の確認・実データ解析による有用性の例証と,高階数近似とみなせる数学的性質の考究を行った.開発したアルゴリズムの特徴は,データ・フィッテングの形をとりながらも,負荷行列と独自分散の推定には,データ行列がなくても標本共分散さえ与えられれば十分である点にある.以上に加えて,共通・独自因子得点の不確定性のあり方の研究と,それの推定値の算定法の提案も行った.
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