研究課題/領域番号 |
23500349
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
上坂 浩之 大阪大学, 臨床医工学融合研究教育センター, 特任教授 (60446250)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 臨床研究デザイン / adaptive design / sample size reestimation / multiple comparison / gatekeeping procedure |
研究概要 |
当初掲げた課題2)定量エンドポイントにおける適応的デザインの実用化研究について、被験者数再設定に関する既存の研究の調査を7月に終え、具体的な事例を基にして、変形3段階適応デザインを考案し、その統計的性質の検討を行った。具体的には、試験第一段階を探索段階とし、第二段階を検証的段階とする。第一段階の結果に従って被験者数の再設定を行い、第二段階において中間解析を一回行い、早期の無効中止または有効中止を可能とするが、検証的立場を重視し、被験者数の再設定はしない。本方式はBauer-Kohneの2段階適応デザインを基にしており、第二段階には種々の群逐次デザインを適用可能である。また、当初より3段階で適応的群逐次計画とすることも可能である。これらの群逐次法には種々のデザインが可能なので、さまざまなデザインの比較が可能なようにプログラムを構成した。本研究成果は、第3回東アジア計量生物学会議(2012年2月、Seoul)で発表した。この方式をさらに深く展開した結果を本年8月の国際計量生物学会議(神戸)にて発表する予定である。 この研究は上坂が主体となり、連携研究者嘉田晃子氏、研究協力者森川敏彦氏と共同で進めている。11月より研究内容についての共同討議を開始した。 課題4)の多重仮説の構造化と統計的推測法については、研究協力者である森川敏彦氏が主体となり上坂と共同で進めている。現在、仮説数が3および4の場合の主要な構造を定式化し、それらにおける調整p値の調整方法と調整p値の公式を導きつつある。この成果を本年8月の国際計量生物学会議(神戸)にて報告の予定である。 医師主導型臨床試験における解析対象集団について考察し、現状での改善の必要性と考え方を、2011年度日本計量生物学会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は「課題1:定量変数および2値応答変数における探索的試験デザインの評価」から開始する予定であったが、「課題2:定量的エンドポイントにおける適応的デザインの実用化研究」により関連する問題の解決が必要となったので、予定を変更して課題2を実施したため、23年度は課題1に着手するに至らなかった。しかし、課題2に関する文献の調査の結果、課題1は課題2の考えを適用することにより、より効果的に検討可能となると考えている。 課題2にとって基本となる被験者数の再設定の既存の理論の調査から開始し7月末頃には調査をおおむね終了した。その後、研究実績の概要に記した如く、方法の定式化ならびに評価を進めており、国際学会にて報告する段階にある。 第3課題「事象エンドポイントにおける適応的デザインの実用化研究」はまだ未着手であるが、基本となる考え方は課題2にあり、今年度具体的に検討を開始する予定である。ただし、当初想定していた連携研究者の転出と赴任先での業務のため本課題に割くことのできる時間が極めて限られてきたため、今後は主として代表研究者が中心となって進めることも視野に入れて態勢を固める。 第4課題「多重仮説の構造化と統計的推測法の開発」については、研究実績の概要に記した如く、仮説構造の定式化と分類は終了しており、国際学会での発表段階にある。以上に示した如く、課題1)および3)が未着手ではあるが、2)および4)は当初の予定通りに進行しており、1)および3)の課題の推進に必要な統計理論の基礎の検討は順調に進んでいる。以上の状況からおおむね順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、研究協力者と随時会合を持って、課題に関する文献調査ならびに理論の検討を進める。ここに掲げた課題に関して、標準的な方法についてはソフトウエアが開発されている。これらのソフトウエアに搭載されている方法を調査するために昨年度ソフトウエアを購入した。今年度はこれらのソフトウエアが扱っている問題を調査し、我々の方法との重複、相違、ならびにソフトウエアから得られる情報との比較評価などを行う。また、扱っている各課題の多くが海外研究者によってなされているのが現状であることから、海外で開催される世界的規模の国際学会に参加し研究の現況を確認するとともに、海外研究者との交流を深めることにより、研究内容を深化させていく。 課題1に関して、先に述べた課題2の成果を基にして連携研究者ならびに研究協力者と共同で本研究の定式化を行い方法の性能評価を開始する。課題2については、国際生物統計会議にて成果を報告するとともに、国内の統計関連学会連合大会にて、臨床試験における本方法と既存の方法の適用に関する比較考察の結果を報告し、批判を仰ぎ、これらの議論を基により深い考察と展開を加え、今年度中に論文としてまとめる計画である。課題3については関連する文献調査を開始し、定式化を終える。課題4に関しては国際計量生物学会議にて成果を報告し、今年度中に論文としてまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の進展に応じて必要な経費執行をしたため、当初の計画額と執行額が異なり、未使用額が発生した。しかし、研究は概ね順調に進展しており、計画の変更は考えていない。 今年度はさらに国内外の研究動向、我々の研究と類似の海外研究者の研究の進展状況などを把握することも含めて、情報収集に努める。また関連するソフトウエアの開発状況を調査し、必要に応じてソフトウエアを購入する。連携研究者、研究協力者と随時会合を持ち、共同研究を推進し、論文化を進める。 以上の計画に従い、前年度の研究費も含めて予定通り執行していく予定である。
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