新治療法の開発研究における初期探索研究では研究治療の効果の大きさに関する情報が非常に乏しく、被験者数の決定が困難である。また、検証試験であっても探索段階と検証段階のエンドポイントが異なる場合には、検証試験の被験者数の設定は困難である。 この状況に対して2相3段階デザインを考案した。試験を第1相と第2相に分け、第1相は楽観的なエフェクトサイズで開始し、第1相終了後必要に応じて被験者数の再設定を行い第2相に継続する。第2相は2段階群逐次デザインとして1回の中間解析で試験のさらなる継続の必要性を評価するが、被験者数の再推定は実施しない。第1相と第2相はにはBauer-Kohneの2段階適応型デザインを適用するhybrid design、有意水準を各相に分割して与えるα分割デザインを導入し、これらに既存の適応型3段階デザイン、Bauer-Kohne-Wassmerの3段階デザインを加えた4つのデザインを比較評価した。群逐次デザインではべき型境界を適用した。境界として最適境界を用いた適応型3段階デザイン、Bauer-Kohne3段階デザイン、Hybrid designはほぼ同様の性能を示したが、O'Brien-Fleming境界の3段階適応型デザインの検出力は真のエフェクトサイズの影響が大きく、一般に平均被験者数が大きくなることが明らかとなった。 第二の課題として多重推測を取り上げた。複数の仮説に興味がある場合に、検定の多重性を考慮して試験としての第1種の過誤確率を制御しつつ、誤りである帰無仮説はできる限り多く有意と判断できるような検定方式が望ましい。このための推測手順としてgatekeeping procedureが知られている。臨床試験で遭遇する、仮説数が2、3、4個の場合について様々な仮説の構造化を例示し、各仮説の検定の調整p値の陽表現を求めた。また、固定順序仮説系列が複数ある場合の平行な多重仮説系列構造に対する調整p値の公式の陽表現を与えた。
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