研究課題/領域番号 |
23500368
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
松嶋 範男 札幌医科大学, 医療人育成センター, 教授 (60137403)
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キーワード | 国際研究者交流(モンゴル) / 国際研究者交流(米国) |
研究概要 |
ロイシンリッチリピート(LRR)はロイシンを多く含むタンデムリピートの一つである。LRRはウイルスからヒトまで幅広い生物に、1万4千個以上の蛋白質に存在する。LRRドメインは、蛋白質同士や蛋白質とリガンドの間の相互作用部位として使われ、動物や植物の自然免疫機構などの多様な機能発現に重要な役割を果たしている。LRRは20~30アミノ酸残基の長さの繰り返し単位を持ち、分子全体で馬蹄形構造や超ラセン構造をとる。LRRはその後半部分の配列の違いにより、8つのクラスに分類されている。 植物蛋白質にのみ存在するとされてきたPlant-Specific LRR (PS-LRR)が、バクテリア由来蛋白質の中にも存在することが明らかになってきている。バイオインフォマティクスの手法を駆使した塩基およびアミン酸配列解析から、PS-LRRをコードする遺伝子において、植物とバククテリアの間のHorizontal gene transfer(HGT)が起こったことを示した。この内容の論文は、本年5月、雑誌 Natural Scienceに掲載される。 UniProtを含む配列データベースから、バクテリアや下等な単細胞真核生物から新規なLRRクラスを含む蛋白質を見出した。そのデータベースを構築する。このデータを用いてマルチプルアラインメントなどを用いて詳細な配列解析を実行する。その結果、4つの新しいLRRクラスをみいだした。構造、機能についても考察した。現在、論文作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的として、次の3つの研究課題を掲げた。(1)新規なLRRクラスの同定と進化研究:我々の開発した方法を用いて、バクテリアからのLRRを含む蛋白質(LRR蛋白質)に存在する新規なLRRクラスを検出し、データベースを構築する。このデータを用いてマルチプルアラインメントなどを用いて詳細な配列解析を実行する。(2)LRRの水平進化の実証:バクテリアLRR蛋白質に存在する”Plant-specific LRR”ドメインの塩基配列を用いてホモロジー検索を行い、検出された”Plant-specific LRR”ドメインの系統樹を作成し水平進化(HGT)の有無を検証する。(3)新規な巨大LRR超周期の検出と分子進化: LRR-RLKが重複した仮想的な蛋白質のアミノ酸配列をクエリーにしたホモロジー検索を行い、巨大LRR超周期を検出する。また、配列解析を実行し進化のスキームを提案する。 (2)の研究は、論文として掲載される。(1)の研究は、現在、論文作成中である。 (3)については、配列データの収集を継続している。また、LRRを含むToll様受容体の分子進化について雑誌GENEに掲載された。さらに、植物のLRR蛋白質(non-LRR領域が介在する特徴的なLRRドメインをもつ蛋白質)についての総説がBiomoleculesに掲載された。したがって、おおむね順調に進行していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の“今後の研究の推進方策”において、「PS-LRRをコードする遺伝子において、植物とバククテリアの間のHGTが起こったことを示した。しかしながら、このHGTをより確かなものにするためには、複数の蛋白質のアミノ酸配列を用いた系統樹解析をすることが必須である。そのためには、アミノ酸配列の類似した領域を特定できるように並べるシーケンスアラインメントを実行しなければならない。すなわち、リピート単位を考慮したアラインメントをする必要がある。しかしながら、既存のプログラムClustal W やPRANKではリピート単位は無視する。タンデムリピートにおいては、一般にタンパク質毎にリピート数は大きく異なるため、信頼できるシーケンスアラインメントを実行することができない。そこで、今年度、リピート単位を考慮した蛋白質タンデムリピートのアラインメントに適用できるプログラムソフトを開発する。」ことを記した。この問題の解決は難しいことが判明した。しかしながら、新しいアルゴリズムを考えることができたので、本年度は、それをLRR蛋白質に適用したい。 また、“新規な巨大LRR超周期の検出と分子進化”の研究のための、配列データベースを構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでの研究成果を、国際会議にて発表する。ドイツ・ベルリンで開催されるIntelligent Systems for Molecular Biology and European Conference on Computational Biology (ISMB/ECCB 2013) Berlin, Germany およびモンゴル、国立モンゴル大学で開催されるBiophysicsおよびBioinformaticsに関する国際会議において研究発表する。これらの旅費として使用する。その他、資料整理のための謝金、論文投稿料等に使用する。 本年度残額が発生したのは、“研究実績の概要”に述べたように、Horizontal gene transfer(HGT)の結果が雑誌Natural Scienceに掲載されることになっていますが、その投稿料が3月ではなく4月に変更になったためです。また、その金額が確定しなかったためです。
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