放射線治療の線量分割関係を表すLQモデルは、経時的な変化を表すことができなかった。放射線治療の臨床的効果は放射線感受性と放射線反応性によって示される。LQモデルは、培養実験の単回照射によるコロニー形成法で生存率を求める方法である、放射線感受性を表す。この方法では放射線反応性を表すことはできなかった。放射線反応性は細胞のアポトーシスと間期死の比率や、間期死に至る半致死時間と、照射を免れた細胞の比率と、その倍加時間の影響を受ける。これらを包括して、GLQモデルを作成して、様々な分割照射における腫瘍の経時的変化を3次元シミュレーションによりモデルの妥当性を示してきた。 27年度は正常組織の分割照射に伴う経時的変化を、GLQモデルを用いて表す試みを行った。乳房温存術後の温存乳房への放射線治療では定型的な照射方法で治療を行うため、放射線治療による皮膚反応は一定の傾向を示す。そこで、乳房温存術後の全乳房照射に伴う皮膚反応を分光測色計で測定したデータをもとに、L*a*b*表色系の各々の色指標に対してGLQモデルを適応して関数として表した。この方法で色変化を再現できるか検証するために、3次元空間に作成した人体モデルの乳房へバックプロジェクションして色変化を再現できることを示した。 また、腫瘍塊の遺伝子解析で、腫瘍が発生する過程で突然変異を起こして、不均一な遺伝的性質を持った腫瘍が形成されることが示されてきた。放射線治療で均一に腫瘍へ照射しても、照射野内の限局した部位から局所再発することがあり、腫瘍の放射線感受性の不均一性が示唆される。不均一な放射線感受性腫瘍の再発様式を3次元空間上でシミュレーションすることを試みた。
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