研究概要 |
前年度に続きヒトの蛋白質のリン酸化を対象とし、今年度は特に天然変性領域(ID領域)と機能性リン酸化部位に着目して解析を進めた。その理由は、質量分析器を用いた組織的なデータ取得により、多数のリン酸化部位が報告されているが、多くは機能性の有無すら不明である。そこで単にリン酸化の有無やその部位を予測するのではなく、機能性リン酸化部位を予測する方針をとった。同時に、リン酸化がID領域に顕著に多く見られることに着目し、進化的保存性との関係を調べた。 具体的には、ヒト蛋白質に対して以下の解析を行った。蛋白質データは、ヒトはUniProtから、それ以外の種はGTOPから取得した。ID領域の判定には、DICHOTを用いた。 1.配列情報を用いてリン酸化部位の予測を行った。予測精度はドメイン上でより高くSerで約80%、予測には周辺30残基程度の広範囲の配列情報が有効であった。対象残基別に予測器を構築すると、SerとThrに対して同様の予測器が得られた。 2.リン酸化部位の進化的保存性を調べた。Mouse, chicken, zebra fish, fruit flyにホモログを持つ蛋白質に対して、Ser/Thrの保存性を比較した。全ての種で、ドメイン上のリン酸化部位、ドメイン上の非リン酸化部位、ID上のリン酸化部位、ID上の非リン酸化部位の順に保存性が高く、機能性リン酸化部位は、ID上でも更に高い保存性を示した。 3.機能性リン酸化部位に対して同様の解析を進めた。UniProtのアノテーションに基づき機能性を判別し、それを有するヒト蛋白質230を得た。それらのmouse, Opossum, O.anatinus, chicken, zebra fish, fruit flyでのオルソログを調べ、zebra fishまでのオーソログが揃った133蛋白質に対して、同様の解析を行った。
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