研究課題/領域番号 |
23500374
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
富井 健太郎 独立行政法人産業技術総合研究所, 生命情報工学研究センター, 研究チーム長 (40357570)
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キーワード | タンパク質 / 基質結合部位 / 機能部位 |
研究概要 |
タンパク質立体構造データベース(PDB)に登録されている大量の既知及び潜在的基質結合部位の網羅的な比較や分類は、タンパク質とその基質の結合に関する特徴発見を促し、効率的で精度の良い予測法の開発につながるものと考えられる。しかし、現状でも100万のオーダーに達し得る結合(候補)部位総体での網羅的比較は一般に多大な計算時間を要するため、新たな手法の開発が期待されていた。これまで本事業では、アミノ酸残基の物理化学的及び幾何学的性質に基づく結合(候補)部位の粗視化と複合ソート法を利用した、従来手法より1000倍以上高速な比較手法を開発し、PDB中の数百万にのぼる低分子結合(候補)部位からの類似ペアの網羅的な列挙を可能にした。開発手法を、330万を越える結合(候補)部位の比較に適用し、スーパーファミリーやフォールド分類にかかわらず、タンパク質間で共通する機能部位の抽出に成功した。また、構造ゲノムプロジェクト等により構造が決定された幾つかの機能未知タンパク質の基質とその結合候補部位の推定にも成功している。現在、PDBについての開発手法による網羅的な比較解析の結果をまとめたデータベースPoSSuMを構築し、国内外の創薬研究を含む幅広い分野の研究者に情報を提供している。PDBエントリ数の増大につれ、開発手法により列挙される類似ペアも膨大な数となった。これに伴い、データベースで提供している各類似ペアの構造重ね合わせの計算量が想定を超え、他アルゴリズム利用の検討やパイプラインの見直し、計算資源の増設等必要な対策を講じた。開発手法は、薬剤の結合部位と候補部位の類似性の比較が可能であり、薬剤のスクリーニング等への応用も期待されることから、公共データベース等の低分子活性情報等と結びつけることで、薬剤の潜在的な結合部位をもつタンパク質の検索を可能とするための統合化に向け取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
取り扱う類似部位ペア情報の増加への対処が必ずしも最適とは言えず、データベースの更新がやや滞っているため。
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今後の研究の推進方策 |
公共データベース等の低分子活性情報等と結びつけることで、薬剤の潜在的な結合部位をもつタンパク質の検索が可能となるようなシステムの構築を目指す。また、本手法の特長の一つである、基質結合部位のもつ様々な性質(幾何学的性質、アミノ酸の物理化学的性質、二次構造等)の特徴抽出法を修正、追加等により、計算機によるオフ・ターゲット予測の効率に改善をもたらすことができるかどうか、研究の進捗状況等に応じて挑戦したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
薬剤の潜在的な結合部位をもつタンパク質の検索が可能となるような新たなシステム構築のため、また、PDBエントリ数の今後の増大に対処するため、主に計算資源の増設等に研究費を使用予定である。
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