研究課題/領域番号 |
23500376
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
石野 洋子 山口大学, 大学院技術経営研究科, 准教授 (90373266)
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キーワード | 進化計算 / バイオインフォマティクス |
研究概要 |
創薬の初期段階では,通常,標的タンパク質に結合する薬剤候補の低分子化合物(リガンド)を,計算機を用いて仮想スクリーニングする.その過程では,標的タンパク質の高精度な立体構造情報が不可欠であるが,現在までに立体構造が確定しているタンパク質の種類・数は限られている.それを補うため,コンピュータによる標的タンパク質の構造予測が盛んに行われているが,当該タンパク質の種類や性質によってその予測精度は大きく異なる.本研究で対象とするGタンパク質共役型受容体(G-Protein Coupled Receptor: GPCR)は重要な創薬ターゲットであるにもかかわらず,これまで結晶構造解析で立体構造が解明されたものは数種類しかない.さらにGPCRは構造の揺らぎが大きいため,コンピュータによる構造予測の精度に限界がある.そこで本研究では,GPCR特有の構造の揺らぎを考慮した新しい構造予測方法を開発することを目的とする.具体的には,GPCRとその既知のリガンドとの結合シミュレーションをモジュール化して進化計算に組み入れることで,揺らぎによって起こる様々な構造のなかから最良構造を探索できるようにする. 本年度は,最近新たに発表されたGPCRの物理化学的な実験による知見を精査し,ロイコトリエン受容体を例に取り上げた予備研究における実験結果の再検討を行い,その結果得られた構造に対して,これまでにGPCR類のアゴニスト・アンタゴニスト・インバースアゴニストとして知られている144の化合物を用いてその構造の正確さを評価した.この成果を学術論文として発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者が所属する山口大学大学院技術経営研究科では,平成25年4月から教育カリキュラムを一新するとともに,留学生向けの英語の講義も開始することになった.この準備に伴い,本研究を集中して行う時間の確保が難しくなり,研究計画よりやや遅れた進捗となってしまった.
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今後の研究の推進方策 |
立体構造既知のGPCRであるヒトβアドレナリン受容体のデータを用いてプログラムの動作を確認した後,計算で得られる立体構造と他の論文に記載されている立体構造を比較し,計算パラメーターを調整する.そして,リガンド既知の他のGPCRのうちから標的GPCRを数種類選択し,立体構造を計算で求め,化合物データベースを用いた仮想スクリーニングを行い,結果が妥当かどうか検証する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は,研究初年度に購入した計算機環境を使用して実験を行うため,大規模な設備備品費はかからない.主にかかる費用は,調査および成果発表のための出張費,書籍・マニュアル・ソフトウェア等の消耗品費,論文校閲費(謝金等)を想定している.
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