研究課題
創薬の初期段階では,通常,標的タンパク質に結合する薬剤候補の低分子化合物(リガンド)を,計算機を用いて仮想スクリーニングする.その過程では,標的タンパク質の高精度な立体構造情報が不可欠であるが,現在までに立体構造が確定しているタンパク質の種類・数は限られている.それを補うため,コンピュータによる標的タンパク質の構造予測が盛んに行われているが,当該タンパク質の種類や性質によってその予測精度は大きく異なる.本研究で対象とするGタンパク質共役型受容体(G-Protein Coupled Receptor: GPCR)は重要な創薬ターゲットであるにもかかわらず,これまで結晶構造解析で立体構造が解明されたものは数種類しかない.さらにGPCRは構造の揺らぎが大きいため,コンピュータによる構造予測の精度に限界がある.そこで本研究では,GPCR特有の構造の揺らぎを考慮した新しい構造予測方法を開発することを目的とする.具体的には,GPCRとその既知のリガンドとの結合シミュレーションをモジュール化して進化計算に組み入れることで,揺らぎによって起こる様々な構造のなかから最良構造を探索できるようにする.まず,ロイコトリエン受容体を例に取り上げた予備研究における実験結果の再検討を行い,その結果得られた構造に対して,これまでにGPCR類のアゴニスト・アンタゴニスト・インバースアゴニストとして知られている144の化合物を用いてその構造の正確さを評価した.次に,立体構造既知のGPCRであるヒトβアドレナリン受容体のデータを用いて,ロイコトリエン受容体と同様に構造探索を行うとともに,計算パラメーターの調整を試みた.また,本研究を進めるなかで,分子ネットワーク計算を社会ネットワークに応用できることがわかり,社会シミュレーションの研究も行った.
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Journal on Innovation and Sustainability
巻: Vol.5, No.2 ページ: 78-86