研究課題/領域番号 |
23500380
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鳥羽 岳太 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (40599669)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 神経回路 / 行動 / キイロショウジョウバエ |
研究概要 |
本研究は、キイロショウジョウバエの求愛行動の基盤となる神経回路網を、遺伝学的ツールを用いて解剖学的、機能的に同定することを目的としている。具体的には、二つに分割された緑色蛍光タンパク質(spGFP)の再構成による蛍光を指標としてシナプス接続を可視化する遺伝学的ツール、GRASPを用い、求愛行動の基盤となる神経回路を形成するfruitless発現神経細胞(Fru[+]細胞)相互、あるいは、他の神経細胞とのシナプス接続をマップして、機能的な神経回路を同定することを目指している。 GRASPの2種類のspGFPを別々の神経細胞で発現させるため、当初の計画では、GAL4-UASシステムとQシステムと呼ばれる2種類の遺伝子発現システムをそれぞれ用いる予定であった。しかしその後、より利点の多い系を着想したため、現在はその系でのGRASPシステムの構築を進めているところである。現在構築を進めている系では、部位特異的組換え酵素の働きにより、二つの異なった構造を取るトランスジーンを用いる。このトランスジーンは、一つの構造を取った時に一方のspGFPを発現し、もう一つの構造を取った時にもう一方のspGFPを発現するように設計されている。シナプス接続をGRASPによって検出するためには、二つのspGFPが同じ細胞で生産されないことが重要であるが、この新規トランスジーンは二つのspGFPの排他的な発現を保証する優れた特性を持っている。 最近他の研究グループによって、神経細胞の活性化がNotchシグナリングの活性化を引き起こすことを示唆する研究結果が発表された。この現象が一般性を持つのであれば、Notchシグナリング活性化を指標として、特定の条件で活性化された神経細胞群を検出することが可能になる。現在、この系を本研究に応用できるかどうかを検討する予備実験を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、新たに設計したGRASPトランスジーンの構築を進めている。また、Notchシグナリング活性化を指標として、機能的神経回路を同定することが可能かどうかを、予備実験により検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
新規GRASPトランスジーンを完成させ、キイロショウジョウバエに導入する。GRASPトランスジェニックショウジョウバエを用いて、Fru[+]細胞相互、あるいは他の神経細胞とのシナプス接続を可視化できるかどうかの予備実験を行う。良好な結果が得られた場合は、大規模な探索を行い、Fru[+]細胞が形作る神経回路網のマッピングを試みる。 また、現在行っている予備実験の結果、Notchシグナリングの活性化を指標とした方法が機能的神経回路の同定に有効であることが示された場合は、この手法による神経回路網のマッピングも平行して行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
GRASPトランスジーン構築に必要な分子生物学用試薬類、消耗品類の購入、キイロショウジョウバエ形質転換外注、その他、研究の進展に伴って発生する必要な物品の購入に研究費を使用する予定である。また、学会に出席して研究成果の発表を行うことを計画しているため、これに伴って発生する旅費にも研究費を使用する予定である。
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