研究課題
1、頭頂連合野の深層の方が浅層よりも視覚野を抑圧する活性化能が高い。大脳皮質の錐体神経細胞の多くは、浅層(脳表より250マイクロメートル付近)と深層(750マイクロメートル付近)に分布する。どちらの細胞群がより効果的に視覚野を抑制するかを調べるため、刺激電極を大脳皮質に刺入し、電気刺激による抑制効果をフラビン蛍光蛋白質イメージング法により観察し、針先が浅層あるいは深層にある状態での差異を調べた。結果は、負フラビン信号では2倍程度の差異が見られ、深層刺激の方が浅層よりも抑制が強いことを明らかにした。2、頭頂連合野の活動活性化により視覚野の応答が抑制される。これまでの実験では、大脳皮質の電気刺激という賦活方法によって頭頂連合野の抑制機能を解析してきたが、この方法では単なる通過繊維の刺激が抑制の原因となっている可能性を排除できなかった。そこで、頭頂連合野にある神経細胞の樹状突起・細胞体を直接グルタミン酸で刺激する方法を試みた。頭頂連合野にケージド・グルタミン酸を注入した後、同領野に紫外光を照射した。ケージド化合物の光分解により放出されたグルタミン酸の効果をフラビン蛍光蛋白質イメージング法により観察した。電気刺激による視覚野抑制と同様な結果を得られることができ、通過繊維の可能性を排除することができた。3、学習により一次視覚野の応答性が変化するという予備的結果を得ることができた。マウスに縦縞および横縞という視覚刺激の弁別をPrusky水迷路により過剰学習させた。縦縞および横縞に対する一次視覚野の応答性をフラビン蛍光蛋白質イメージング法により観察したところ、過剰学習したマウス群と学習していないマウス群とでは異なっていることが示唆された。この系を使えば、頭頂連合野と視覚野応答性の可塑的変化との関係を解析できると予想され、今後の研究に対する指針を得ることができた。
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