タウリンは発達期脳に非常に多くその後減少することが知られている。我々はこれまでの研究から、タウリンがWNK-SPAK/OSR1のシグナルを沼生化し、KCC2のThr906とThr1007をリン酸化することにより、RCC2の活性を抑制し、細胞内Cl-濃度([Cl-]i)を上昇することを突き止めた。さらに子宮内電気穿孔法で導入したKCC2変異体(RCC2T906A/T1007A)を用い、発達期大脳皮質における神経細胞移動が[Cl-]iにより調節を受けていることを見出した。 そこで、本年度は、KCC2T906A/T1007Aによりその移動が阻害された神経細胞の由来を調べるため、大脳皮質の成体での深層、浅層の分子マーカーであるTbr1、Cux1を用い免疫染色を行った。胎生15日のラット胎仔に電気穿孔法を行った場合、対照としてのGFP、あるいはGFP+KCC2を導入した神経細胞朗台生18日では浅層にあり、それらの多くはCux11陽性であった。これらは、その後大脳皮質の成熟に伴い深層に位置することになる。|方、KCC2T906A/T1007Aを導入した神経細胞は、胎生18日でその多くが脳室帯付近に存在したが、それらの細胞もCux1陽性であった。また、いずれの細胞もTbr1陰性であった。これらのことから、KCC2T906A/T1007Aを導入された細胞は本来Cux1陽性細胞として成体では大脳皮質のV、VI層に存在するはずのものであり、それらの移動が阻害されて胎生18日の時点では脳室帯付近に存在していることが示唆された。
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