研究課題/領域番号 |
23500388
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田川 義晃 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50303813)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 大脳皮質 / 回路形成 / 神経活動 / 軸索投射 / 再生 |
研究概要 |
本研究では、神経活動依存的メカニズムに基づいて大脳皮質の長距離軸索投射を再建する新しい神経再生技術の開発をめざしている。子宮内電気穿孔法を用いて神経活動を抑制する分子ツールKir2.1をマウス大脳皮質2/3層興奮性細胞に発現させると、大脳皮質の代表的な長距離軸索投射である脳梁軸索投射が障害されることをすでに報告している(Mizuno et al., JNS 2007)。本研究では、Kir2.1と同時に光感受性イオンチャネルchannelrhodopsin2(ChR2)を発現させ、生後発達期の大脳皮質に装着したLEDで光刺激を行うことによって、神経活動を補えば障害された軸索投射が回復するか否かを検証する実験を行う。まず、子宮内電気穿孔法によってChR2を皮質2/3層細胞に発現させ、麻酔下で脳表から473nmレーザー光又はLED光刺激を行ったところ、細胞外記録電極にて光刺激に同期した神経細胞の発火が確認された。次に、より大きなcurrentを期待できる変異体ChR2H134Rの使用、蛋白質のより高い発現が期待できるWPRE配列の追加により、より高効率で光刺激に同期した神経発火を記録できることを確認した。さらに、生後12日目前後から48時間、小型LEDを脳表に装着して任意のパターンで光刺激する実験系を確立した。ChR2とKir2.1を同時に発現させ、生後12日目から48時間5Hzで光刺激を行うと、一部の動物で脳梁軸索投射の回復が確認された。LED装着の仕方の改良、光刺激パターンの検討、より長時間の光刺激の方法の確立など、まだ改良する余地が多いにあるが、optogeneticsの技術によって長距離軸索投射の再建が可能であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発達期のマウスの脳に小型LEDを装着する実験系を確立し、optogeneticsの技術を用いて大脳皮質の長距離軸索の再建が可能であることを示唆するデータを得ており、計画は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
確立した実験系を用いて、生後2週のどの時期に、どのようなパターンで光刺激を行えば、脳梁軸索投射の回復がもっとも見られるかを検証する。再建された軸索が、皮質のどの層でシナプスを作っているかを、synaptophysin-GFP等との共発現で確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は主に消耗品の購入費として使用する(プラスミドの精製キット、細胞特異的マーカー等の抗体、プラスチックディッシュやプレート等)。また、研究成果を公表するため、学会参加費等の旅費、論文投稿や掲載費等として約20万円の支出を予定している。
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