研究課題/領域番号 |
23500388
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田川 義晃 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (50303813)
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キーワード | 大脳皮質 / 回路形成 / 神経活動 / 軸索投射 / 再生 |
研究概要 |
本研究では、神経活動依存的メカニズムに基づいて大脳皮質の長距離軸索投射を再建する新しい神経再生技術の開発をめざしている。昨年までに、optogeneticsの技術によって発達期のマウス大脳皮質神経細胞に神経活動を誘導する技術を確立し、神経活動誘導によって長距離軸索投射の再建が可能であることを確認した。本年は、いくつかの神経活動パターンや活動誘導の期間を試し、どのような条件が軸索投射の回復に有効かを検証する実験を進めた。 具体的には、子宮内電気穿孔法によってchannelrhodopsin2とKir2.1を発現させたマウスの脳にLEDを装着し、生後1-2週目に2-4日間、1-20Hzで光照射を行い、脳梁軸索投射の回復を検討した。光照射をしない個体に比べて、照射を行った動物では脳梁軸索の回復が見られたが、正常動物の軸索投射パターンまでの回復は見られなかった。 軸索投射の回復が見られる条件で、どのようなパターンの神経活動が生じるかを検証する目的で、子宮内電気穿孔法とtetracycline-controlled gene expression systemを組み合わせて、時期特異的に神経活動を抑制する実験系を確立した。この実験系を用いて、生後10日目以降に神経活動抑制を解除すると、完全な軸索投射の回復が見られた。一方、12日目以降に神経活動抑制を解除すると、軸索投射の回復の程度が徐々に低下した。これらの結果から、生後10ー12日目の大脳皮質で生じている神経活動パターンが軸索投射に関与することが示唆される。その活動パターンが軸索投射の回復に有効であると考えられるため、生後10ー12日目の大脳皮質で生じている神経活動パターンを記録する実験を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
optogeneticsの技術によって大脳皮質の長距離軸索投射の再建を検証する実験系がすでに確立されており、順調に実験を進めている。また、軸索投射の回復が見られる実験系を作り出すことにも成功しており、その際に生じる大脳皮質の神経活動パターンを記録する実験により、軸索投射の再建に有効な神経活動パターンを明らかにできると期待される。両者を合わせることで、当初の目標の達成が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
生後10ー12日目の大脳皮質で生じる神経活動パターンが軸索投射の回復に有効であると考えられるため、生後10ー12日目の大脳皮質で生じる神経活動パターンを記録する実験を進める。その活動パターンが軸索投射の回復に有効であることをoptogeneticsを用いた実験で検証する。生後12日目以降では、軸索投射の回復がほとんど見られなくなる。その理由の一つとして、上記の神経活動パターンが生じないことが考えられる。optogeneticsの技術を用いて、生後12日目以降の大脳皮質に生後10-12日の神経活動を誘導し、軸索投射の回復が見られるかを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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