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2012 年度 実施状況報告書

神経細胞産生を制御する増殖因子シグナルの新たな作用機序解明

研究課題

研究課題/領域番号 23500389
研究機関京都大学

研究代表者

佐藤 智美  京都大学, 再生医科学研究所, 研究員 (50373311)

研究分担者 栗崎 知浩  埼玉医科大学, 医学部, 講師 (90311422)
キーワード神経発生 / 脳 / ErbB シグナル / EGF リガンド / ゼブラフィッシュ / 視蓋
研究概要

本研究は、ゼブラフィッシュ視蓋とマウス脳をモデル系とし、増殖因子受容体ErbBが神経細胞の産生を制御するという新たな分子機構を明らかにすることを目的とし、神経細胞の産生過程におけるErbBシグナルの作用機序とその普遍性を明らかにする。
平成24年度は、EGF受容体に対するリガンド分子として同定された増殖因子NRG1の解析を行った。アイソフォーム特異的なアンチセンスMOオリゴヌクレオチドのインジェクションによる発現阻害を行い、1)神経幹細胞である放射状グリア細胞の増殖、分化への影響、2)神経細胞の分化への影響を、whole-mount in situ hybridization (WISH)や, Tg(gfap:GFP), Tg(-8.4neurog1:nRFP), Tg(brn3a-hsp70:GFP)トランスジェニック系統を用いた免疫染色などにより解析した。NRG1の発現阻害は、ErbB受容体阻害剤の処理、ErbB受容体の発現阻害と同様に、放射状グリア細胞の増殖と分化には影響せず、神経細胞の分化が阻害されることを明らかにした。同様の表現型は、前脳、後脳、網膜においても観察された。
また、NRG1のアイソフォーム特異的な抗体を用いて、視蓋の神経発生過程におけるNRG1細胞外ドメインの分布を解析した。分化した神経細胞が観察され始める受精後36時間(hpf)では、 WISHと同様、脳室帯に分布していたが、40 hpfにおいては、脳室亜帯の神経前駆細胞周辺に分布パターンが変化することが明らかになった。膜型NRG1は、細胞外ドメインがプロテアーゼにより切断されることが知られている。このことから、NRG1が、脳室帯の放射状グリア細胞で産生され、移送または、細胞外ドメインの切断により、神経前駆細胞にシグナルを伝達し、神経前駆細胞からの神経細胞産生を制御していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成24年度は、EGF受容体に対するリガンド分子として同定された増殖因子NRG1の解析を行い、NRG1の発現阻害は、ErbB受容体阻害剤の処理、ErbB受容体の発現阻害と同様、放射状グリア細胞の増殖と分化には影響せず、神経細胞の分化が阻害されていることを明らかにした。また、NRG1のアイソフォーム特異的な抗体を用いて、NRG1細胞外ドメインタンパク質の分布を解析し、NRG1が、脳室帯の放射状グリア細胞で産生され、移送または、細胞外ドメインの切断により、神経前駆細胞にシグナルを伝達し、神経前駆細胞からの神経細胞産生を制御していることが示唆されている。
本研究は、ゼブラフィッシュとマウス脳をモデル系として、1)ErbBシグナルは、どのようなメカニズムで神経細胞の産生を制御しているのか、2)リガンド分子は、ErbBシグナルをどのように活性化するのか、3)視蓋以外の脳部位や、マウス脳の神経細胞産生においても、保存された機構なのか、という3つの課題について解析を行うことで、増殖因子受容体ErbBが神経細胞の産生を制御する新たな分子機構を明らかにすることを目的としている。本年度の研究成果から、ゼブラフィッシュ脳における1)、2)の課題について、概ね結果が得られたと考えている。

今後の研究の推進方策

ゼブラフィッシュ視蓋をモデル系としたNRG1-ErbBシグナルの機能解析については、1)NRG1リガンドのノックダウンによって、確かにErbBシグナル伝達が阻害されているかどうかを、リン酸化ErbB抗体を用いた免疫組織化学染色によって明らかにし、2)組換え型ヒトNRG1の脳室内投与により、NRG1ノックダウンの表現型が回復するかを解析することで、in vivoの視蓋神経細胞の産生過程において、本当に切断型NRG1が機能しているかどうか、NRG1-ErbBシグナルの機能がゼブラフィッシュからヒトまで保存されているかどうかを明らかにする。
マウス脳におけるNRG1-ErbBシグナルの解析については、1)妊娠マウスにErbB受容体阻害剤を腹腔内投与し、マウス胚の神経細胞産生過程にどのような影響が見られるのかを、神経細胞マーカーであるNeuroD、betaIII-tubulinや、神経前駆細胞に特異的なTbr2に対する抗体等を用いて解析し、2)NRG1コンディショナルノックアウトマウス、nestin-CreERT2トランスジェニックマウスを用いて、脳の神経細胞産生の時期特異的にノックアウトし、NRG1がどのような役割を果たしているのかを明らかにする。

次年度の研究費の使用計画

次年度は、ゼブラフィッシュ胚にインジェクションするための装置や実体顕微鏡を物品として購入するほか、分子生物学、組織科学実験に用いる試薬類、実験器具、消耗品等を購入する。
また、研究打ち合わせや研究成果発表のための学会参加費、交通費、宿泊費などの旅費、さらに、論文投稿のための英文校閲費、投稿料などにも使用する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて その他

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] A role of NRG1-ErbB signaling in the generation of neurons during development of the optic tectum in zebrafish.

    • 著者名/発表者名
      Tomomi Sato, Fuminori Sato, Kazuya Sakaguchi, Ryoma Tanigome, Tomohiro Kurisaki, Atsuko Sehara
    • 学会等名
      18th Japanese Medaka and Zebrafish Meeting
    • 発表場所
      京都
  • [学会発表] A regulatory role of NRG1-ErbB4 signaling in generation of neurons in the developing zebrafish brain.

    • 著者名/発表者名
      Tomomi Sato, Fuminori Sato, Kazuya Sakaguchi, Ryoma Tanigome, Tomohiro Kurisaki, Atsuko Sehara
    • 学会等名
      Kyoto University Global COE “Center for Frontier Medicine” International Symposium / Retreat 2012
    • 発表場所
      淡路
  • [学会発表] A role of ErbB4 signaling in generation of neurons in the developing zebrafish brain.

    • 著者名/発表者名
      Tomomi Sato, Fuminori Sato, Kazuya Sakaguchi, Ryoma Tanigome, Aosa Kamezaki, Tomohiro Kurisaki, Atsuko Sehara
    • 学会等名
      第35回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      福岡

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公開日: 2014-07-24  

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