研究課題/領域番号 |
23500391
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小川 正 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50311197)
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キーワード | 注意 / 視覚的顕著性 / 視覚探索 / サル / 眼球運動 |
研究概要 |
視覚的選択が行われる過程では、周囲刺激と異なる刺激は視覚的顕著性が強くなり、我々の自動的に注意を惹きつける(ボトムアップ型注意)。もし探索したい物体の視覚的顕著性が高ければ、その物体を素早く探し出すことができる大脳皮質には複数の視覚領野が存在するが、各領野は得意とする特徴次元が異なるため、異なる特徴次元で目立つ刺激は異なる視覚領野群で表現される。このため、各視覚領野で処理された色、形、動きなどの特徴次元ごとの信号が、唯一存在するsaliency mapに統合されることによって特徴次元に依存しない視覚的顕著性地図が形成されると考えられている。 本研究では、単独の特徴次元(色、または形)、及び複数の特徴次元(色&形)でポップアウトする刺激へのニューロン活動を後頭頂葉(LIP野)から記録し、各条件での応答を比較することによって、個々の特徴次元における視覚的顕著性信号から複数特徴次元の視覚的顕著性信号がどのような加算様式を経て統合されているのかを明らかにすることを目的とする。 昨年度は、単独の特徴次元(色、または形)、及び複数の特徴次元(色&形)でポップアウトする刺激を目標とする視覚探索課題を訓練した2頭のサルLIP野からニューロン活動を記録した。その結果、目標刺激のある刺激条件で活動が増大するニューロン群と、目標刺激のないキャッチ刺激条件で活動が増大するニューロン群を見出した。従来の研究では、前頭前野でしか報告されていないニューロン活動であり、LIP野の機能的意義を考える上で重要な神経生理学的知見と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)2頭のサルに対して、視覚探索課題の訓練を施し、課題を遂行しているサルの頭頂間溝外側壁領域(LIP野)からニューロン活動の記録実験を開始した。 (2)LIP野においては、従来報告されていなかったニューロン活動を見出した。 (3) 得られた知見を公表するために投稿論文の作成に着手した。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 訓練済みのサル2頭を用いて、行動課題遂行中の後頭頂連合野から単一ニューロン活動記録を継続して行ない、ニューロン数を増大させる。 (2) LIP野だけでなく、他の領野から記録することも計画する。 (3) 得られたニューロン活動データ[単独の特徴次元(色、または形)、及び複数の特徴次元(色&形)でポップアウトする刺激へのニューロン活動強度]を用いて、個々の特徴次元における視覚的顕著性信号から複数特徴次元の視覚的顕著性信号がどのような加算様式を経て統合されているのか説明するための神経回路も出るの構築を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験で使用するため行動課題を訓練していたサルが、実験者の予想していなかったストラテジーを用いて行動課題を行なうようになり、当初の目的に沿わせるために訓練する行動課題に修正を加える必要があった。そのため、当初目的の実験データを記録するための期間が不十分となり実施期間を延長する必要が生じた。 訓練後のサルに行動課題を行わせて電気生理学実験を行い、当初の研究目的の達成に必要な実験データを集める。記録実験終了後、研究目的である実験データにもとづく後頭頂連合野の視覚的顕著性地図モデルの構築を試みる。 次年度においても実験を継続的に遂行するため、実験で使用する消耗品の購入、及びサルを飼養するために動物施設に支払う飼育管理費の支払いに未使用の研究費を使用する。
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