研究課題/領域番号 |
23500392
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
武井 義則 京都大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (30502455)
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キーワード | シグナル伝達 / 発生 分化 / 脳 神経 / 神経科学 |
研究概要 |
グルタミン酸は脳内で最も一般的な興奮性神経伝達物質である。一方、GABA(gamma-amino butyric acid)は最も一般的な抑制性神経伝達物質であり、両者のバランスによって多くの脳機能が制御されている。この事から予想できるように正常な脳機能には、グルタミン酸を分泌するグルタミン酸作動性神経細胞とGABAを分泌するGABA作動性神経細胞を適切に配置する事が必須であり、両者の分化制御機構は、脳の発生メカニズムを知る上できわめて重要である。応募者は、マウス胚性幹細胞が興奮性神経細胞に分化するのか抑制性神経細胞に分化するのかを、細胞外ヌクレオチドが決定できる事を見いだした。本研究は、その分子的メカニズムを解明し、神経・精神疾患の治療や再生医療へ応用するための基盤を確立する事が目的である。 昨年度の結果を受けて、さらに情報伝達系の検討を進めた。その結果、細胞外ヌクレオチドがマウスだけでなくヒトの神経幹細胞からのグルタミン酸作動性神経細胞の分化を誘導できる事が示された。 成体マウス海馬の組織培養を用いて、新生神経細胞のサブタイプを免疫染色で同定して、細胞外ヌクレオチドを介して成体組織内の神経細胞タイプ選択を制御できるか検討した。その結果、細胞外ヌクレオチドが海馬内で作られる神経細胞の運命決定を制御する可能性が示された。また、in vivoでの検討を開始するための準備と基礎検討を進めている。 以上の結果から、細胞外ヌクレオチドによる神経細胞サブタイプ選択機構を明らかに出来た。そしてその機構が成体脳での神経細胞新生において、サブタイプ選択に関与する可能性を示すことが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実験計画に従って研究を進めており、昨年度には細胞外ヌクレオチドによる神経細胞サブタイプ選択に関与するリセプターとその細胞内情報伝達系を明らかにした。今年度はその結果に基づいて、今年度の目標であったマウス海馬の組織培養を用いた検討を行い、一定の結果を得ている。また、in vivoでの検討方法についても調査を開始する事ができた。これらの点を鑑み、概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
申請時の予定通り細胞外ヌクレオチドによる興奮性、抑制性神経細胞タイプ選択が、成体神経細胞新生過程で利用されているのか検討する。 これまでに得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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