研究課題
脳の性差は出生前後に精巣由来のアンドロゲンの作用を受けるか否かで恒久的に構築されるが、このアンドロゲンの効果を成体まで維持する分子機構は不明であった。研究代表者は、従来の研究で、ヒストンアセチル化とDNAメチル化のエピジェネティック制御が、この機構の本体であることを示してきた。本研究申請では、脳の性分化過程の出生前後から成熟後までの時間軸の中で、ヒストンアセチル化とDNAメチル化といった、異なるエピジェネティック機構がどのように相互作用することで、脳の性分化が成し遂げられるのか解明を行う。平成23-24年度度に、胎児期から成体までの性分化の時間経過の中において脳の性差に関わる領域(内側視索前野,MPO)で脳の性分化に必須のエストロゲン受容体遺伝子のエピジェネティック修飾のプロファイルを解析し、ヒストンアセチル化がDNAメチル化修飾に先んじて起きることを明らかにした。ヒストン脱アセチル化酵素の阻害薬を生後に脳室内投与した個体から成体期にMPOを回収し、ヒストンアセチル化とDNA メチル化の程度を解析した。その結果、阻害薬投与によりヒストンアセチル化が上昇し、次いでDNAメチル化パターンの雄性化が阻害されることが明らかになった。平成25年度は、ヒストン脱アセチル化に先立っておこるヒストンアセチル化反応が脳の雄性化に関与していることをこの反応をになう酵素の阻害薬を投与した動物を用いた行動レベルでの解析で示した。すなわち、脳の性差形成過程において、ヒストンのアセチル化、ヒストン脱アセチル化、DNAのメチル化といったエピジェネティックス機構間に上下関係が存在することが示唆された。以上の成果をもとに、日本神経内分泌学会、日本神経科学会および日本組織細胞化学会で発表し、注目を集めた。特に、日本神経内分泌学会では学会賞を受賞した。さらに、学術論文として神経科学領域の学術雑誌に5編発表した。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
PLoS One
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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