研究課題/領域番号 |
23500397
|
研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
木村 晃久 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (20225022)
|
キーワード | 視床網様核 / 聴覚 / 視覚 / 体性感覚 / 内臓感覚 / 視床 / 大脳皮質 / 注意 |
研究概要 |
大脳皮質と視床が構成するループ回路で、視床網様核が異種感覚情報の選択と重み付け行い、様々な種類の感覚情報に対する注意の制御と異種感覚情報間の干渉と統合に関する神経機構の根幹を構成すると仮定する。大脳皮質と視床が構成するループ回路の感覚情報処理や意識の構成の神経メカニズムの解明を目的として、視床網様核の機能解剖に焦点を当て研究をすすめている。当該年度では、視覚の一次と高次視床核へ投射する視床網様核細胞の活動の特性に関する研究(ラットを結果をまとめた。視床網様核細胞は、情報の重み付けに深く関与するバースト活動を示すが、光反応と自発活動において、視覚の一次と高次視床核へ投射する視床網様核細胞群が特異なバースト活動を示すことを明らかにした。視床網様核が膝状体と非膝状体システムの視覚情報処理を異なる形で制御し、2つの視覚システムの機能を特徴づける神経機構が存在することを示した(Neuroscience 226: 208-226, 2012)。また、視覚、聴覚の刺激が、視床網様核細胞の音あるいは光反応を修飾する(Cross-modal interaction)ことを示す研究結果をまとめ、論文を投稿するところである。更に、視床網様核細胞における聴覚と体性感覚の相互干渉に関する実験を行い、その結果をまとめている。これまでの研究のまとめとして、視床と大脳皮質に展開する聴覚情報処理機構と、その情報機構における視床網様核の役割に関する研究知見を包括し学会で報告した(第89回日本生理学会大会、シンポジウム:聴皮質研究の最前線)。また、新たな研究展開のための視点から視床網様核に関する解剖と機能に関する研究知見を総論にまとめた(Clinical Neuroscience 30: 46-48)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度研究実施計画1)<内側膝状体細胞から、音圧と周波数に関連した一次、二次反応の特性を調べ、更に、2音の時間差刺激による一次、二次反応の変化と細胞の解剖学的特性を調べる>実験は、当該年度(平成24年度)で購入したコンピュータ、計測システム(アナログ-デジタル変換器)、音刺激装置を稼働させるプログラムを作成しているところで、実験の遂行に至っていない。平成23年度研究実施計画2)と3)<体性感覚(痛覚)あるいは視覚の時間差刺激による一次、二次聴覚反応の変化を内側膝状体細胞から記録し、反応の変化と解剖学的特性の関係を調べる>の実験は、視覚の時間差刺激による変化に関する実験は終了し結果を解析しているが、体性感覚(痛覚)による変化に関する実験は、次年度以降更に継続する必要がある。以上の研究経計画は、研究項目1)の一部で平成24年度までに終了する予定としていたので遅れている。平成24年度以降の研究実施計画の研究項目2)<視床網様核細胞が反応する感覚種を特定し、その感覚種の刺激に対する一次、二次反応が、他の感覚種の時間差刺激にどのように影響されるか調べる>の実験は、聴覚と視覚の間の影響に関する実験が終了、論文を投稿するところに至っている。当初の研究実施計画に含まれていないが、全体の研究目的達成に有用な研究結果(視覚の一次と高次視床核へ投射する視床網様核細胞群が示すバースト活動の特異性)を論文で発表した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度までに終了する予定で終了に至っていない研究項目1)の一部は、できるだけ早い時期に新しい実験システム(プログラムの開発等)を構築し終了させるように努める。平成24年度以降の研究実施計画の研究項目2)の実験で、聴覚と体性感覚の間の影響に関する実験は終了しているので、今年度論文にまとめる。また、視覚と体性感覚の間の影響に関する実験を開始したところであるが、今年度中に実験を終了する予定である。その後、当初の研究実施計画に沿って、実験の対象領域を、大脳皮質1次聴覚野、大脳島皮質聴覚野、更に視覚あるいは体性感覚の視床核へと拡大し、平成24年度以降の研究実施計画の研究項目3)<大脳皮質および視床細胞が反応する感覚種を特定し、その感覚種の刺激に対する一次、二次反応が、他の感覚種の時間差刺激にどのように影響されるか調べる>に取り組む。
|
次年度の研究費の使用計画 |
実験動物、薬品等の消耗品と研究成果発表のための旅費等は、当初の研究実施計画に沿って使用する。備品については、当該年度(平成24年度)で購入したコンピュータ、計測システム(アナログ-デジタル変換器)、音刺激装置による新しい実験システム(プログラムの開発等)の稼働のプロセスで補完の必要が生じた電子機器と部品、ソフトウエアの購入を考慮する。
|