研究課題/領域番号 |
23500401
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
曽根 雅紀 東邦大学, 理学部, 准教授 (00397548)
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研究分担者 |
田村 拓也 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (80396647)
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キーワード | ショウジョウバエ / 神経変性 / 神経変性疾患 / 細胞内輸送 / アルツハイマー病 |
研究概要 |
本研究は細胞内タンパク質輸送異常の神経変性・神経変性疾患における役割を明らかにすることを目的としている。本年度は昨年度に引き続き、われわれが独自の研究から得てきた手がかりである、yata遺伝子(アルツハイマー病原因分子であるアミロイド前駆体タンパク質の輸送調節分子)および前頭側頭型認知症原因分子(小胞体上の輸送調節部位で機能する)の変異体について、主にショウジョウバエモデルを用いて、遺伝学的解析および分子機能解析を行った。われわれはyataヌル変異体ホモ接合体の詳細な表現型解析を成虫の複眼および幼虫の脂肪体の系を用いて行い、タンパク質分解型に関連する異常が生じていることを示唆する結果が得られた。また、前頭側頭型認知症原因分子の変異体について、多重変異体において見られたレスキュー効果について、定量PCR法を用いた転写産物の解析、ウェスタンブロット法を用いた翻訳産物の解析、免疫染色法による封入体形成分子の解析などを含む分子レベルでの解析によって、解釈の裏付けとなるデータを得ることができた。また、yataの制御下にある発生段階特異的なトラフィッキング制御機構に生じた異常がいかにして神経変性などの病態を引き起こしていくのかを明らかにしていくために、その細胞内輸送がyataの制御下にある分子であるHIGタンパク質について解析を行い、輸送調節とタンパク質分解に密接な関連があることを示すデータが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はショウジョウバエモデルを用いた遺伝学的手法およびその他の分子生物学的手法を用いて、細胞内タンパク質輸送異常と神経変性・神経変性疾患との関連を明らかにすることを目的とする。本年度は、アルツハイマー病原因分子の細胞内輸送を調節する分子であるyataについての解析を行い、神経変性表現型の発症原因を解明するための手がかりとなる知見が得られた。また、前頭側頭型認知症の原因分子について、多重変異体の作成による詳細な遺伝解析の解釈の裏付けとなる分子レベルでのデータを得ることができた。以上のことなど、最終年度において統合的な研究成果を得ることにつながっていく多くの成果が得られており、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに得られた知見に基づいて、統合的な研究成果を得る。yataについて、神経変性表現型の発症原因を明らかにし、神経変性疾患との関連を明らかにしていく。前頭側頭型認知症の原因分子については、発症機構についての一定の結論を得る。また、yataの制御下にある発生段階特異的なトラフィッキング制御機構に生じた異常がいかにして神経変性などの病態を引き起こしていくのかを、さまざまな研究手法を用いて明らかにしていく。以上の研究成果について、外部発表をしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
分子生物学実験を行うための試薬類・消耗品類・小型機器、ショウジョウバエ飼育のためのチューブとフタ、ショウジョウバエエサ作成の材料(寒天、グルコース、コーンミール、乾燥酵母、小麦胚芽、防腐剤類)の購入、ショウジョウバエ組織標本作製実験において専門的技術を提供していただく研究協力者への謝金、および研究成果の外部発表のための旅費として研究費を支出する予定である。
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