研究課題/領域番号 |
23500405
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
鈴木 えみ子 国立遺伝学研究所, 構造遺伝学研究センター, 准教授 (20173891)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | Toll / シナプス / 神経-筋接合 / ショウジョウバエ |
研究概要 |
シナプスの形成や維持及び可塑的変化の過程で、様々な細胞膜タンパク質が重要な役割を担っている。我々はこの過程に関わる可能性の高い新規の細胞膜タンパク質として、ショウジョウバエToll-7を同定した。Toll-7はパターン認識タンパク質群であるToll Interleukin-1 Receptor (TIR) proteinsの一員であるが、その機能は未だ不明である。また、TIRの多くが神経系で発現しているが、その機能についての解析は乏しい。そこで、本研究ではToll-7を含みショウジョウバエに9種類あるToll family proteinがシナプス形成・維持・可塑的変化に関与する可能性を検証しその分子メカニズムを解明することを目的とし、今年度は以下の解析を行なった。1.Toll7の発現パターンの確認:これまでの実験からToll-7は中枢神経系にて発現することを確認していたが、ポストシナプスである筋肉細胞での発現については不明であった。そこで、筋肉における発現を検証するため「in situハイブリダイゼーション」による染色と「組織特異的RT-PCR」の2種類の方法を行なった。これまでのところ、筋肉での発現を示す結果は得られていない。2.変異体表現型の探索:我々の解析から、Toll-7の突然変異体では神経筋接合部のポストシナプスにおいて、グルタミン酸受容体の発現が上昇していることが明らかとなっている。今年度は、Toll-7がシナプス形成において他の役割を持つのか検証した。Toll-7変異体において様々なシナプス因子の局在パターンを調べた。プレシナプスでは、アクティブゾーンの形成、微小管とその結合タンパク質の配置を調べたが明確な異常は認められなかった。ポストシナプスでは、細胞骨格を成すスペクリン及びその制御分子であるaPKCの局在を検証したがこれらタンパク質の局在は正常であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は9個のToll family遺伝子について運動ニューロンとポストシナプスの筋肉で発現解析を行なう予定だったが、Toll-7の筋肉における発現検証に予想以上の時間がかかったため、他のToll family 遺伝子の発現解析ができなかった。また、個別のTOLLタンパク質に対する特異性の高い抗体が得られなかったため、予定していたタンパク質の局在解析が進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
まずTollファミリー遺伝子の神経及び筋肉における発現パターンを明らかにする。発現の検出された遺伝子について、当初の計画通り機能欠失突然変異を用いてシナプス形成における役割を明らかにする。さらに、Tollファミリーのリガンドであると考えられているSpファミリー及びTollの細胞内シグナル系の因子について遺伝学的解析を行ない、Tollシグナル経路のシナプス形成における機能を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度行えなかったTollファミリーの発現解析に用いる分子生物学実験の経費を次年度に使用する。また、引き続き行う機能欠失突然変異の作製及び解析実験に必要な経費を、次年度以降に請求する研究費とあわせて使用する。
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