研究課題/領域番号 |
23500411
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
津森 登志子 島根大学, 医学部, 准教授 (30217377)
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キーワード | melanocortin-4 receptor / vagus nerve / pancreas / nodose ganglion / islet / mouse / GFP |
研究概要 |
今年度は、引き続きメラノコルチン4受容体(MC4-R)プロモーターの支配下に緑色蛍光蛋白(GFP)を発現する遺伝子導入マウス(MC4-R/GFPマウス)を用いて、膵島内に分布するGFP 陽性軸索終末の由来とそのシナプス後要素について逆行性標識法と免疫組織化学的手法の併用により解析した。昨年度の解析により、膵臓内に分布するGFP 陽性線維は迷走神経由来であることが判明したため、膵島内のGFP 陽性線維は迷走神経節状神経節由来であることが予想された。よって、逆行性標識物質としてコレラトキシン B サブユニット(CTb)を膵臓内に注入し、迷走神経節状神経節内での GFP 陽性かつ CTb で標識されるニューロンを検索した結果、CTb 標識ニューロンのうち約25%が GFP 陽性であることが明らかになった。これらの CTb/GFP 陽性ニューロンは一般に小型で、節状神経節内ではより尾側方に位置していた。 一方、膵島内での GFP 陽性線維は明瞭な念珠状の軸索終末様構造を形成しながら膵島辺縁部のみならず膵島中心部にも分布していた。しかしながら、 GFP 陽性線維による支配を受ける膵島の分布は膵臓全体で均質ではなく、十二指腸寄りの腺体に限局していることが明らかになった。膵島内での GFP 陽性線維のターゲットを調べるために膵島細胞のマーカー(A 細胞: グルカゴン、B 細胞:インシュリン、D 細胞:ソマトスタチン)を用いた二重蛍光標識法を行うと、 GFP 陽性線維は膵島辺縁部では A 細胞や D 細胞に、膵島中心部ではB 細胞に接着していることが明らかになった。さらに Pre-embedding 法を用いて膵島内での GFP 陽性軸索終末部を電顕下で観察すると、これらの軸索終末部は腺細胞に直接接していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた迷走神経節状神経節内の MC4-R 発現膵臓投射ニューロン(GFP 陽性ニューロン)の確認と膵島内での GFP 陽性神経線維終末のターゲット確認作業に加えて、新たに膵臓内での GFP 陽性神経支配を受ける膵島の分布に関する解析も追加して実施したが、概ね予定通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き MC4-R/GFP マウスを用いて、神経路標識法および免疫電子顕微鏡法により以下の通り研究を進めて行く。25年度はまず、迷走神経節状神経節に含まれる MC4-R 発現ニューロン(GFP 陽性ニューロン)からの軸索終末が、胃・十二指腸の粘膜内でそれぞれ何をターゲットにしているのかを共焦点レーザー顕微鏡を用いて検索する。次に pre-embedding 法を用いて、これらの GFP 陽性軸索終末部とターゲット間とのシナプス構築を電子顕微鏡下で明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度分研究費800,000円について、物品費(すべて薬品などの消耗品に使用)として600,000円、旅費(学会参加費用)として約150,000円、その他(論文投稿費用・別刷り代など)として約50,000円を振り分けて 使用予定である。
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