今年度は、引き続きメラノコルチン4受容体(MC4-R)プロモーターの支配下に緑色蛍光蛋白(GFP)を発現する遺伝子導入マウス(MC4-R/GFPマウス)を用いて、迷走神経節状神経節に含まれる MC4-R 発現ニューロン(GFP 陽性ニューロン)からの軸索終末が、胃・十二指腸の粘膜内でどのように分布し、何をターゲットにしているのかを共焦点レーザー顕微鏡を用いて検索した。その結果、特に胃の幽門部から十二指腸近位部の粘膜において、GFP 陽性線維が明瞭な念珠状の軸索終末様構造を形成しながら多数分布していることが明らかになった。またそれらの終末部の中には、粘膜上皮の基底部に近接して存在するものが見られた。これらの結果から、胃・十二指腸からの求心性線維には、MC4-Rを発現する迷走神経節状神経節ニューロン由来のものが含まれ、MC4-Rを発現する迷走神経背側運動核ニューロン由来の節前線維(H23年度の研究成果)の存在と併せて、消化管運動制御におけるメラノコルチン制御系の密接な関わりが示唆された。 さらに今年度は、MC4-R/GFPマウスを使用した予備実験により、迷走神経節状神経節以外の脳神経付属神経節にもGFP発現ニューロンが存在すること、弧束核には豊富なGFP陽性線維終末が存在すること、舌の味蕾には豊富なGFP陽性線維終末が存在することが明らかになったことから、本研究のテーマを発展させて味覚の情報伝達に関わる神経路とメラノコルチン摂食調節系との関連についても調べることにした。その結果、MC4-R/GFPマウス舌内の有郭乳頭と茸状乳頭内の味蕾内線維は、それぞれ錐体神経節および膝神経節内のGFP陽性ニューロン由来であることが、逆行性標識法により明らかになった。これらのことから、MC4-R発現ニューロン由来の味蕾内線維は、味細胞における味覚の感受調節に関わる可能性が推察された。
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